はじめに
日本証券業協会が「個人投資家の証券投資に関する意識調査報告書2025年」を公表しました。調査対象は日本全国の18歳以上の有価証券保有者5000人です。特に注目したいのが、2024年8月、そして2025年4月の株価急落時に、調査対象の個人がどのような行動をとったのかという点です。
急落時に投資を始められる人はいない
このところやや調整ぎみですが、国内外の株価は9月に入ってから上昇トレンドとなり、日経平均株価やS&P500などの株価インデックスは、過去最高値を更新し続けていました。
ただ、このように値上がりしてくると、「ここまで水準が上がってしまうと、怖くて株式に投資できない」という声が、どこからともなく聞こえてきます。特に投資の初心者ともなれば、なおのことでしょう。
では、今から投資をするのは、遅すぎるのでしょうか。
確かに、これから投資できるだけの資金的な余力があるならば、もっと早くから始めておくに越したことはなかったともいえるでしょう。特に2025年は4月に株価が急落し、日経平均株価は3月26日の3万8220円から、4月7日には3万792円まで値下がりしました。このボトムで買って、9月19日の高値4万5852円まで保有していれば、日経平均株価でも48.90%ものリターンが得られました。わずか5カ月間で約50%も値上がりしたものを、これから買いに行けるかというと、少し様子を見ておきたいと考えるのが、大方の初心者ではないでしょうか。
でも、次に株価が暴落した時、本当に買えるでしょうか。この答えが今回、テーマに取り上げた「個人投資家の証券投資に関する意識調査報告書2025年」にあります。
2024年8月と2025年4月の株価急落時に、「証券投資を始めた/新規に証券口座を開設した」と答えた人の割合がどの程度だったのかを見ると、2024年8月が1.2%、2025年4月が0.6%でした。
投資は思い立った時に始める
これは、「株価が大きく下げたら投資を始めるよ」といっても、実際にその状況がきても、できない人が大半を占めることを意味します。目の前で底なし沼のように株価が下がっていく様子を目の当たりにしたら、投資未経験の人は、恐ろしくて黙って見ているくらいしかできないでしょう。
それを考えれば、「投資を始めよう」と思った時に始めるのが良い、ということになります。もちろん、今はひょっとしたら高値圏かも知れません。もしそう考えるのであれば、まずは少額資金での投資からスタートさせれば良いでしょう。それであれば、この先で株価が急落したとしても、評価損の額はそれほど大きくならないでしょうし、なによりも株価が急落する前からポジションを持っていると、不思議なことに急落した時でも買いに動けたりします。
もっといえば、投資信託の定時定額買い付けをしておけば、株価が急落した時にも自動的に買い付けてくれるので、あまり意識することなく、安値を拾えていたりします。まずは始めてみることが肝心だということです。
ちょっと感心したのは、「相場急落を踏まえた投資行動は取っていない」とする回答比が、高まっていることです。2024年8月の急落時における回答比が29.8%だったのに対し、2025年4月時点では32.6%に上昇しました。
2025年4月の急落時における他の回答を見ると、「有価証券の投資額を変えなかった」が44.7%、「有価証券の投資額を増やした」が16.8%、「有価証券の投資額を減らした」が5.3%でした。
よく株価が急落すると、「マーケットから撤退をすることになりました」という個人投資家も少なくありませんが、これらの数字を見ると案外、個人は株価の急落に対して冷静だったことが分かります。
「有価証券の投資額を増やした」と答えた人はかなり積極的なスタンスで投資をしている人たちと思われますが、大半の人たちにとって投資と長く付き合っていくためには、相場の浮き沈みで投資行動を変えるよりも、44.7%の人たちがそうだったように、投資額を変えることなく、淡々と続けていくことが大事だと思われます。