はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は深野康彦氏がお答えします。
5年後に引退を考えている自営業者です。引退後は資産運用と資産の取り崩しで生きていくつもりで、現在7,000万円ある資産を5年で1億円まで増やす計画を立てています。計算上は1億円あれば、元本の取り崩しと年金のみで85歳までは問題ないはずです。
投資元本が1,500万円とすると、毎年300万円を投資して、それを2倍に増やせば達成できる額ではあるのですが、最近の世界情勢を踏まえるとリスクある投資には躊躇しております。今後、どのような考え方で資産運用をすればよいか、ご指南いただければ幸いです。
(50代前半 独身 男性)
深野: 早期リタイアに関する、ご質問ありがとうございます。
5年で1億円にはリスクがともなう
ご質問者の方が試算された結果、5年後リタイアするためには、1億円あれば公的年金と資産の取り崩しで85歳まで問題がない計算とのこと。あくまでも推測になりますが、仮に58歳でリタイアされるのであれば、毎年370万円程度を取り崩す予定なのでしょう。ただし、この金額は運用益を考慮していません。
運用益を考慮すれば毎年の取り崩し可能額はもっと増えることになりますが、その裏を返せば毎年370万円程度の取り崩しで済むのであれば、5年後に1億円を準備する必要はなくなるのです。
なぜ、このようなことを申し上げるかというと、ご質問にあるように毎年300万円の投資をした場合、元本は5年で1,500万円増えますが、総資産を1億円にするためには運用益を1,500万円確保する必要があるからです。
言い換えれば、かなりリスクをとった運用を行わない限り、5年で1億円は達成できないのです。反面、失敗する可能性も高まるため、この方法はおすすめはできません。
低収益でも確実性の高い運用を
そこで、一生涯、運用は続けられるのですから、残り3,000万円を5年で確保して1億円にするのではなく、5年後に8,500万円(元本ベース)、運用益を加味して8,800万円から9,000万円程度を確保し、運用を続けながら毎年370万円程度を取り崩すと考えてみてはいかがでしょうか。
ちなみに5年後に8,800万円の数字は、現在保有の7,000万円、毎年の300万円を5年間それぞれ1%で運用すれば準備できます。
では、5年後に8,800万円を確保できるとして、27年間、毎年370万円程度を取り崩していくための運用益はどれくらいか。これは1.0%(同金額で28年の場合の運用益は1.2%)です。
短期間で高収益を確保するのではなく、長期で運用し、低収益でも確実性の高い方法を考えるべきです。
ご質問にも書かれているように、市場の不確実性は高まっていますので、今後はよりリスク管理が重要になってくるでしょう。早期リタイアに向けて、がんばってください。