はじめに

市場の不確実性が高まる中、短期の値動きに振り回されない「長期投資」への関心が高まっています。しかし、長く保有できる銘柄をどう見極めるかは、多くの投資家の悩みどころ。本稿では、長期投資を成功へ導くための「3つの掟」を軸に、銘柄選びの本質を考えます。


揺れる相場で問われる、長期投資の軸

今週は米中貿易摩擦懸念の再燃や、日本では政治面の先行き不透明感など、相場は荒れ模様となりました。不確実性の高い時代、インフレの進行もあり、資産運用の必要性を感じている方が増えています。NISAの普及などで長期投資を始める人も多い一方で、「どの銘柄を選べばいいのか」「長く保有して大丈夫か」といった不安も根強い状況です。

長期投資をする際、銘柄選びの基準を持つことが成果を左右します。

相場は常に変動し、短期的には予測不能な出来事が市場を揺さぶりますが、10年、20年といったスパンで重要になるのは、一時的な値動きではなく、企業そのものの「成長力」と「持続力」です。

そこで今回は、投資家が実践しやすく普遍的な判断軸として、「社会に必要とされ成長性が見込める企業を選ぶこと」「経営が効率的で株主を大切にしている企業を選ぶこと」「自分が理解できて応援したいと思える銘柄を選ぶこと」――この3つを軸に、長期投資の考え方を整理します。

1.社会に必要とされ成長性が見込める企業を選ぶ

長期投資の第一歩は「その企業が社会にとって必要不可欠な存在かどうか」を見極めることです。足元の業績が好調でも、一時的なブームに依存しているビジネスは、数年後には衰退している可能性がありますよね。

ITバブル期に急拡大した企業や、スマートフォンの普及によって淘汰されたガラケー関連企業などがその典型といえるでしょう。

一方で、社会の根本的なニーズに応える企業は息が長い傾向にあるといえます。食料、医療、インフラ、エネルギー、情報通信といった分野は、人々の生活を支える基盤であり、容易に代替されるものではないでしょう。

特に、少子高齢化や環境問題、デジタル化といった社会課題に取り組む企業は、長期的に需要が続く可能性が高く、長期投資の対象として検討に値します。中でも、独自の技術力やシェア率など定性面な強みを持つ銘柄は注目できます。

成長性の見極め方

成長性を判断する際には、売上高や利益が過去数年間にわたり安定して増加しているかを見ることが基本です。四半期ごとの業績変動に一喜一憂する必要はなく、長い目で見たときに右肩上がりのトレンドを描いているかどうかは重要です。さらに、売り上げ増加が一時的な値上げやキャンペーンによるものではなく、確かな需要に基づいているかどうかも見極めましょう。

チャート上でも週足で上昇トレンドとなっている、下値も上値も切り上げている銘柄は、長期投資に向いている銘柄である可能性が高いと考えます。

持続可能なビジネスモデル

サブスクリプションやストックビジネスは、安定した収益をもたらす代表例といえます。加入者が安定して増えていること、離脱率が低いことも押さえるべきポイントです。

逆に言えば、単発の販売依存型のビジネスは景気の変動や競合の参入によって売上や収益が不安定になりやすい傾向があります。長期投資においては、変化に強いビジネスモデルを持つ企業を選ぶのが基本です。とはいえ、最終的には投資家として、「この企業は10年後も社会に求められているだろうか」と問うてみることが重要です。自信を持って「YES」と答えられるならば、長期保有に耐える銘柄である可能性が高いのです。

余談になりますが、先日、弊社セミナーでご一緒した企業の経営陣の方が、参加した投資家から「高市氏が掲げる政策に関連するテーマ株なのか。そうであれば、今後、政治動向の影響を受けるのではないか」と質問される場面がありました。つまり、「政治の追い風によって短期的に株価が動くタイプの銘柄なのか」という確認です。これに対して経営陣は、「それはあまり関係がありません。私たちは自分たちがやるべきことをしっかりと進めていくだけです」と明快に答えていました。

「政策に売りなし」と言われるように、政策関連銘柄は一時的な注目を集めやすいものの、長期的な成長を支えるのはあくまで企業の本質的な競争力です。一時的なテーマに左右されず、社会に必要とされる事業を地道に磨き続ける企業こそ、長期投資において評価されるべき存在といえるでしょう。

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