はじめに
2.経営が効率的で株主を大切にしている企業を選ぶ
どれほど社会的に必要とされる事業を展開していても、経営が非効率で株主への意識が低い企業は長期投資には不向きです。投資家が資金を託すのは、企業の成長の果実をともに享受するため。その責任を経営陣がどのように果たしているかは、極めて重要です。
経営効率を測る指標
経営効率を測る指標として代表的なのがROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)です。
ROEは株主資本をどれだけ効率的に利益へと変えているかを示すもので、国際的にも重視されています。もちろん数値は変動しますが、長期的に安定して高いROEを維持している企業は、経営の効率性が高いといえます。
PBRも注目すべき指標です。PBRが低すぎる場合は、企業が市場から過小評価されている可能性があり、資本効率の改善余地がある企業ともいえます。近年、東証から「PBR1倍割れ企業への改善要請」も出され、資本効率を意識した経営が注目されています。
一方で、PBRが高すぎる場合は、将来の期待が織り込まれ過ぎている可能性があります。投資家は、数値の高低だけでなく、その背景にある経営戦略や改善姿勢を確認することが大切です。
株主への還元姿勢
株主還元の姿勢も見逃せません。安定配当や累進配当、自社株買いを行う企業は株主への利益還元を重視する姿勢を持っていることがわかります。日本企業の中には、かつて内部留保を優先して配当を軽視していた会社も少なくありませんでしたが、近年はガバナンス改革が進み、配当政策の見直しが相次いでいます。この流れを的確に捉え、株主還元の姿勢を持つ企業かどうかは、長期投資家にとって重要な判断軸となります。
経営陣の姿勢を読む
数字だけでは見えない部分を理解するためには、経営陣が長期的なビジョンを持ち、短期的な利益にとらわれず持続可能な成長を重視しているかを見極めることが重要です。私が代表をつとめるイベントスでは、企業のIR支援に取り組んでいますが、その現場で感じるのは、IRの姿勢や経営者の思いには、その企業の本質や将来への姿勢が如実に表れるということです。だからこそ、IRの在り方やトップメッセージを丁寧に読み解くことは、長期投資を行う上でも非常に重要だと考えています。