はじめに

サイドFIREで不足する生活費を何年まかなえるか

仮に来年から退職し、パート収入月10万円+投資信託の取り崩し月10万円で生活費月20万円をまかなうとします。年間支出は240万円。貯金730万円のうち360万は2026年度のNISAに使用予定とのことですので、残り370万円を生活防衛資金+予備費という流動性資金として確保し、残り3,990万円を運用するとしましょう。

運用利回り年3%で、年120万円を取り崩した場合、約40年間分取り崩すことが可能。試算上は、80歳前後まで生活を維持できる見込みであり、サイドFIRE自体は実現可能なように思えます。

ただし、この試算は“想定上の理想値”です。実際には、予想以上のインフレの進行や医療・介護費の増加、運用成績の悪化などを考慮しておく必要があります。

また、「取り崩し額を月10万円」とお考えですが、株式や投資信託のような価格変動商品を「定額」取り崩しをする場合、株価が下落しているときは売却する口数(割合)が多くなってしまい、資産残高の目減りが加速します。積立の際に買い付け単価を抑える効果を発揮した「ドルコスト平均法」がマイナスに働いてしまうのです。

その結果、運用環境によっては、資産残高が大きく目減りすることに。それを防ぐには「定率」取り崩しが効果的ですが、この方法は資産残高(ロット)が大きくないと、必要な金額が確保できません。

さらに、心配なのは心理的な問題です。私は40歳の時に乳がんを経験し、治療期間中、収入がまったく入ってこない時期がありました。これまでずっと働き続けてきた身としては、金額の多寡は別にして、定期的な収入が入ってこないという状態は精神的にかなり辛いものでした。金融資産はある程度保有していましたし、共働きの夫がいるにも関わらず、です。

これは、定年退職された方によくみられる傾向でもありますが、取り崩しを始めて、「もうこれ以上資産が大きく増える見込みがない」と思うと、心理的な不安から、お金があっても安心して使えないという人が少なくありません。

「コーストFIRE」と「サイドFIRE」の違いは?

相談者は、サイドFIREをご希望とのことですが、そもそも「コーストFIRE」と「サイドFIRE」は、達成後の働き方や目標資産額に違いがあります。

コーストFIREは、「惰性走行」を意味する「Coast」の名の通り、ある程度の資産が貯まった後は、その資産を運用することで、追加の貯蓄や投資をしなくても、定年退職する頃には老後資金が目標額に達する状態を指します。

また、コーストFIREは、「経済的自立(FI)」の状態ではありますが、早期リタイア(RE)はせず、定年まで働き続けることを前提としているため、厳密には「FIRE」ではないとされることもあります。目標とする資産額は必要な老後資金の目標額から逆算した額です。

一方、サイドFIREは、資産運用による不労所得と、自分のペースで続ける労働収入を組み合わせて生活するセミリタイアのスタイル。完全に働くことを辞めるフルFIREとは異なり、資産運用による収入と自分のペースで続ける労働収入の二本柱で生活費をまかないます。

目標とする資産額は、米国の「4%ルール」という考え方に則ると、年間の生活費から労働収入分を引いた額の25倍が目安で、年間支出額が400万円なら1億円。目標達成後は、好きなことや得意なことを仕事にしたり、週に数日だけ働いたり、働き方の自由度が高いのが特徴です。

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