はじめに

バリスタFIRE計画が破綻するリスクと要因

ただし、シミュレーション上とは異なり、人生は計画通りに行かないこともしばしば。その場合のリスクに対して心の準備をしておきたいもの。

今回のバリスタFIRE計画における最大の懸念は、収入を極端に絞ってしまうことです。現在は会社員として定期的な現金収入があるため、キャッシュポジションが少なくてもいいですが、FIRE後は、いまよりは厚めに現金を持っておくと良いでしょう。

FIRE後の収入の大部分は投資信託の取り崩しです。投資信託は、実は買うより売る方が難しいと言われています。想定しているシミュレーション上では毎年3%資産が増える見込みですが、実際に売るときの値動きは上がったり下がったり一定ではありません。市場の上がり調子が続いていれば売るのも気が楽ですが、辛いのは下がっているときや暴落時。市場が下がっているときは、いつ上がるのかとても不安になります。また、一度暴落すると、その後の回復に時間がかかり、すぐに売却するのが難しいるような事態も考えられます。

ちなみに、売却の判断をすること自体が難しい場合は、証券会社によっては毎月一定額の自動取り崩し機能があるので、利用すると取り崩しをしやすくなるでしょう。

また、現在3%と低く抑えている想定利率を上回る運用成績のときは、その分を売却し現金で持っておくことで暴落時の売却を抑えるクッション材にすることができます。

持ち家にかかる費用:修繕していないと500万近くかかる場合も

次に質問にある、FIRE後の住まいについて考えていきます。「持ち家」と「公営住宅」のどちらが経済的合理性に優れているかを考えてみましょう。

まず、「築30年程度の建物」ということを条件に持ち家にかかる維持費用を試算していきます。

・頭金ゼロ、固定金利2%、35年ローンを組んだ場合、毎月の返済額=約10万円
・固定資産税+都市計画税=年間15万円(土地や家屋の状況により異なる)
・火災保険=年間3万円
・修繕費用=修繕済みの物件であれば良いですが、していない場合、500万円くらいかけて大幅に修繕をしなければならない場合があります。その後も10年ごとに150万円程度、購入から30年経ったときは、さらに大規模な修繕に500万程度かかる可能性も。このくらいの時期になると、修繕ではなく、土地を売り、賃貸に住むという選択肢も出てくると思います。

次に持ち家の資産価値を試算してみましょう。仮にローン返済後に売却すると、その時は建物の資産価値は無いも同然、土地の価値のみが資産価値として残っている状態です。土地の価値が値上がりしているといいのですが、市況や立地次第ですし、将来のことなので確実なことは分かりません。

今回は、仮に購入時に土地の価格が2,000万円だったとして、これが維持され、資産価値として残るものとします。仮に3,000万円で購入し、2,000万円で売却できても、その間にかかっている税金や修繕費などのトータルコストは6,000万円〜6,650万円程度になり、売却するまで実質4000万円以上のコストを負担していることになります。

また、家の選び方もどこに、どのような家に住みたいかというより、予算3,000万円以内、23区以内で戸建てが購入できる可能性がある場所ということでピックアップされたのだろうと思います。たしかに、足立区・江戸川区・葛飾区は23区内では比較的不動産が安い地域です。検索したところ、この3区内には3,000万円強の築古の戸建て物件がいくつかありました。しかしながら、現在都内の不動産価格は年々上昇していますし、中古物件は一点もの。引っ越したい時期に予算内の物件があるとは限りません。欲しくても買えないというリスクもあります。

また、与信のことを考えると、不動産を購入するならFIRE前の会社員の信用を活かせるタイミングのほうがよいですね。

一方で都営住宅ですが、都営住宅は低所得の人を対象に住宅に困っている家族や単身者向けの住宅です。そのため、入居する住宅や所得などにより使用料は異なりますが、低く抑えられていることが多いです。ここでは仮に家賃を4万円程度としますが、都民住宅の家賃も一定ではなく上がっていきます。仮にマイホームを買った場合のローン完済年齢である71歳まで住み続けるとしましょう。その場合の家賃の合計費用は1,680〜2,000万円程度だと思います。

従って、純粋にどちらが安いかということで比べれば、都営住宅のほうがコストとしては安いです。

ただし、都営住宅には先着順の物件もありますが、基本的には抽選やポイント抽選です。ご自身が住みたいタイミングで入れるか、住みたい地域などに住めるかどうかは分かりません。民間の賃貸に住むことも想定しておく必要があります。

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