はじめに
10月27日、日経平均株価が5万円に乗せました。4月7日、トランプ関税の発表にともなって株価が暴落した時、同平均株価は3万792円という安値をつけています。そこから半年で株価は64%の上昇したことになります。はたして、これから投資を始めるのは正しいことなのでしょうか。
もう投資できない?
すでに投資を始めている人は、もちろん何に投資しているのかにもよりますが、少なくとも2024年1月に新NISAがスタートしてから投資を始めた人は、大半が利益を得ている状態だと思います。2024年1月の日経平均株価は3万3193円からのスタートでしたから、よほど不運なものを選ばない限りは、値上がり益が得られているはずです。
したがって、早めにスタートを切った人たちは今ごろ、投資の妙味を存分に味わっていると思うのですが、問題はこれから投資を始めてみようと考えている人たちです。
恐らく日経平均株価が5万円に乗せたのを見て、こう思っている人が多いのではないでしょうか。
「5万円は高い。大きく下落した時に投資することにしよう」。
確かに、5万円という日経平均株価は、過去の株価水準からすれば相当、高いところにあります。アベノミクスによる過剰流動性相場がスタートした2013年1月の株価水準は、日経平均株価で1万1000円前後でした。
ここから日本の長期上昇トレンドが始まったわけですが、そこからすでに4.6倍もの株高になっています。いずれ株価は暴落するという前提のもと、しばらく様子見を決め込もうと考えている投資初心者は案外、大勢いるように思うのです。
決して割高ではない日本の株価
ただ、本当に日本株が割高なのかというと、案外そうでもなかったりします。
まず現在の日経平均株価採用銘柄のPER(株価収益率)ですが、19倍前後です。過去の日経平均株価採用銘柄のPER平均が16倍であることからすれば、やや割高といえなくもありませんが、1989年12月のバブルピーク時のPERは60倍を超えていました。なお、各国のPERを比較すると、
インド(SENSEX)・・・・・・26.4倍
ドイツ(DAX)・・・・・・25.4倍
米国(NYダウ)・・・・・・24.8倍
イギリス(FT100)・・・・・・20倍
となっています。主要国のPERと比較しても、日本のそれは比較的、割安であると考えられます。
また、東証プライム市場の株式益回りは5.4%です。株式益回りとは、企業の1株あたり税引利益を株価で割ったもので、投資家が投資した企業から得られるリターンを意味します。基本的に株式益回りが高い企業ほど、株価に対して企業の利益が多く、投資家にとっては魅力的な投資対象と判断できます。逆に株式益回りが低い企業は、株価が割高に評価されている恐れがあるので注意が必要です。
また、株式益回りは長期金利と比較することによって、今、株式に投資するのが合理的な行動かどうかを判断する要素にもなります。たとえば長期金利が株式益回りを上回るような事態になれば、株式投資の妙味が低いことを意味します。なぜなら、株式は国債に比べてリスクが高い分、そのプレミアムが長期金利に乗らないと、合理性が説明できないからです。
その点、現在の株式益回りが5.4%であるのに対して、長期金利は1.7%程度ですから、投資対象として株式を選択するのは、合理的であると判断できます。
このように、バブルピーク時のPERとの比較、現在の各国PER比較、そして株式益回りといった各種指標から見ても、今の日本の株価は決してバブルではないし、極端に割高な水準とも言えないのです。