はじめに

「確定拠出年金は受け取り時に課税される」という認識が高まってきています。正しい理解はとても重要ですが、課税を嫌って利用しないのではなく老後資金として最大限に活用するという視点で様々な受け取りのオプションを知ることも大切です。

今回は特に定年で退職金と企業型DCを受け取る際の税金と、受け取り方のオプションについて解説します。受け取り時の選択肢について理解を深めていただけるとうれしいです。


企業型DCの3通りの受け取り方

ファイナンシャルプラナーとして、お金にまつわるご相談事を様々お伺いしますが、最近特に増えたのが「確定拠出年金の受け取り時の課税」についてです。特に会社に退職一時金があり、企業型DCにも加入している場合、定年の年に両方を受け取ってしまうと、いくら課税されるのか、課税されないようにするにはどうしたら良いのかといった質問が多いです。

確定拠出年金の受け取り時の税金計算はかなり複雑であり、複数の要素により結果が変ってきます。そのため、今回はひとつの事例をご紹介します。

企業型DCは定年を迎えると多くの場合その加入資格を失います。会社からは退職金と同時に企業型DCも受け取れるという案内をされることも多いようですが、実際には3つの選択肢があります。

①定年時に退職金と一緒に企業型DCも受け取る
②75歳までそのまま保有する
③個人型(iDeCo)を利用する

①の定年時に受け取るにはさらに、一括で受け取る、年金で受け取る、一括と年金を併用するの3つの方法があります。

また③の「個人型(iDeCo)を利用する」は、その方が定年後も厚生年金に加入して働くあるいは公的年金の被保険者であることが前提です。またこちらもiDeCoに資産を移換し継続する方法と新規で加入する方法があります。

【事例】A様の退職所得控除の計算と退職一時金にかかる税金

A様は定年時に退職一時金を受け取ります。勤続年数は37年、退職一時金は1800万円です。

退職金は受け取り時に課税されますが、その際勤続年数により退職所得控除が計算され、超過分の2分の1が課税の対象となります。なお課税の際は、給与など他の所得とは切り離された分離課税となります。

退職所得控除は、勤続年数20年までは1年あたり40万円、20年を超える部分については1年あたり70万円で計算されます。

A様の退職一時金にかかる税金
退職所得控除:1990万円(40万円x20年+70万円x17年=1990万円)
退職一時金の金額:1800万円
退職一時金にかかる税金の計算方法
1800万円 - 1990万円(退職所得控除)= 0円
所得税 0円 住民税 0円 (退職金を一括で受け取る場合、社会保険料はかかりません)
※上記の計算は分りやすくするため簡略化しています。
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