はじめに
かつて「ワークマン女子」のヒットで一世を風靡したワークマン(7564)。株式市場でも大人気銘柄で、2018年から2020年の2年間で株価は約10倍のスター銘柄でした。しかしその後、コロナ禍や成長鈍化を受けて株価は下落トレンドに。かつて10,000円台だった株価は、2024年には3,500円近辺まで落ち込みました。その頃には、「ワークマン」という言葉も、株式投資の世界ではほとんど聞かれなくなり、すっかり「かつてのスター銘柄」の位置付けに。
ところが2025年に入り、ワークマンは明確に復活の兆しを見せています。業績の回復に加え、新たなヒット商品「リカバリーウェア」の存在も気になるところです。そこで、同社の低迷と復活の背景、投資家としての見通し、そしてリカバリーウェアがもたらす可能性について深掘りしたいと思います。
業績は過去最高益を更新! V字回復が鮮明に
ワークマンの業績推移を振り返ると、売上高の過去最高は2025年3月期の1,369億円、営業利益は2022年3月期の268億円です。売上高に関しては、伸び率の変化はあるものの2011年以降、15期連続過去最高を更新。今期もそれを上回る予想なので達成すれば16期連続です。
つまり、ワークマンの商品力が落ちたわけではないということが分かります。しかし営業利益に関しては、23年度、24年度と2期連続減益となっており、ピークから比べると20%近く営業利益が減少しました。その要因は3つあります。
1. 商品在庫の積み増しと受給のズレ
コロナ禍開けを見据えた積極的な商品仕入れ、在庫拡大を行うも、気温・季節変動などで売れ残りが発生。結果、在庫処分や値引き販売が利益を圧迫しました。
2. 新業態(#ワークマン女子など)の初期投資負担
SNS・女性インフルエンサー戦略で話題を集めた「ワークマン女子」業態は、インスタ映えやアウトドアブームと合致し大ヒットしましたが、出店加速により新店の収益性が相対的に低下、また女性向けラインの商品数、購買頻度の限界などがあり、従来の作業服(プロユース)ほどの回転率が取れず、全体の効率が落ちました。
ファッション性重視の層は、リピート率が低く継続性に弱いという傾向があります。また、ユニクロなどアパレル大手も機能性衣料に本格参入し、競争が激化したことも悪材料です。
3. 販管費・人件費の増加
配送網、物流強化による物流費の拡大に加え、EC事業への投資やアプリ開発・プロモーション強化などによる販管費の増加、また、人手不足下での店舗オペレーション維持に人件費も上昇圧力がかかってしまいました。
このように「増収減益」、かつ成長戦略に陰りが見えたことで、当社への評価、つまりPERが切り下げられました。過去には70倍を超えることもありましたが、2023年から24年は、20倍前後で評価されています。
補足すると、株価は、一株益×PERで計算されますので、PERが切り下がれば、それだけ株価も下がります。業績の悪化以上に、株価の下落インパクトが大きいのは、そのためです。
しかし、2026年3月期に入ってから、業績に変化が見え始めました。
直近発表された2026年3月期の第2四半期決算は、売上高にあたる営業総収入が761億円(前年比+15.7%)、営業利益144億円(+21.1%)と好調。合わせて、通期の営業利益を従来の260億円から282億円へ上方修正しました。これにより4期ぶりの過去最高益を更新する見通しです。
とくに猛暑の影響を受け、夏物や熱中症対策商品(ファン付きウェア等)が好調に推移。さらに、価格戦略とPB商品構成の見直しにより、粗利率も改善しています。
注目すべきは、これが「気候要因による一過性」ではなく、構造的な収益改善である点です。プライベートブランド比率は65.4%と高水準にあり、直営店の売上成長や物流強化など、経営面でも改善が進んでいます。
12月1日に発表された11月の月次売り上げでは既存店の売上高が前年比107.9%で、10月の119.5%からはやや伸び率が鈍化するも、連続で前年比プラスとなっており、業績回復は明確な起動に乗ったといってよいでしょう。