はじめに
「年収が高いのに貯まらない」「年収が低くても堅実に貯めている」。
家計調査を見ると、年収1000万円でも貯蓄ゼロ世帯が存在する一方、年収300万円台でも数千万円以上の金融資産を持つ家庭もあります。違いを生むのは、収入額ではなく支出と負債の構造です。
年収では測れない家計を整えることこそ、豊かさへの第一歩です。金融資産が少ない家計のパターン3つと、貯まる家計になる3つの条件をお伝えします。
高収入でも貯まらない家計の構造
金融経済教育推進機構が2024年に実施した「家計の金融行動に関する世論調査」によると、共働きの世帯年収1,000~1,200万円でも、金融資産「ゼロ」と回答している家庭は10.9%。一方、世帯収入300~500万円でも、「3,000万円以上」と回答した家庭は3.8%もおり、高所得層が必ずしも潤沢な金融資産があるわけではないことを示しています。
年収が高くても、出ていくお金も多く、金融資産が少ない世帯には、いくつかの共通したパターンが見られます。
1. 住宅ローンが重い
その最たるものが住宅ローンです。6,000万円の住宅ローンを組めば、月々の返済は15万〜20万円程度になります。手取り収入が月50万円前後だとすると、住宅費だけで収入の3〜4割を占めることになり、貯蓄に回す余裕は大きく減少します。
さらに固定資産税や修繕費といった住宅維持費も加わるため、年収の割に自由に使えるお金は意外と少なくなるのです。
2. 教育費がかさんでいる
次に、子どもの教育費も大きな支出項目です。例えば、認可保育園の保育料は世帯の所得に応じて決まるため、年収が高いほど保育料も高くなります。年収1,000万円を超える世帯では、月額7〜8万円の保育料を支払うことも珍しくありません。年収の1割近くに相当し、貯蓄を圧迫する大きな要因となっています。
最近では、小中学校の給食費や保育料の無償化の東京都と有償の神奈川県で「多摩川格差」とまで呼ばれるようまでになり、地域によっても差があります。
さらに、私立学校への進学や習い事に通わせる場合は投資が増えます。小学校から大学まで私立に通わせた場合、一人あたり2,000万円~2,500万円以上の教育費がかかるとされています。子どもが二人いれば、教育費だけで5,000万円近い支出になり、いくら年収が高くても貯蓄に回す余裕は限られてきます。
3. 生活コストが年収とともに上がっている
もう一つ見逃せないのが、収入に応じて膨らむ生活コストです。年収が上がると、付き合いの範囲も広がり、外食や交際費、衣服代といった支出も自然と増えていきます。「このくらいの収入があれば、これくらいの暮らしをしても大丈夫だろう」という感覚が、知らず知らずのうちに支出を増やしていくのです。