はじめに
半導体関連の買いは、割安な素材や化学メーカーに波及する公算

【半導体関連】
2025年に引き続き、2026年も「半導体関連銘柄」からは目が離せないでしょう。生成AIやデータセンター向けの需要が今後も増え続けるという点だけではありません。政府は「経済安全保障」の中で「半導体の安定供給確保」を中心的な存在として積極的に支援しており、いわば「国策」として半導体産業を盛り上げようとしていることが最大のポイントです。
2025年11月、政府は最先端の半導体の量産に取り組むラピダスへの支援を、約1兆円追加することを明らかにしました。これで、同社に対する支援額は、計2.9兆円まで膨れ上がることになります。一民間企業にこのレベルの支援を行うことに対して、一部では批判の声も上がっていますが、同社に対する政府の一連の言動には「何としても日本の半導体産業を復活させる」という強い意志を感じざるを得ません。
この政府による巨額支援は、2003年の「りそな銀行への公的資金注入」を想起させます。1990年以降の不動産バブル崩壊によって、邦銀は巨額の不良債権を抱え込みました。その結果、りそな銀行は自己資本比率が大幅に低下するなど、財務状況が著しく悪化。政府はりそな銀行に約2兆円の公的資金を注入し、実質国有化という救済策を取りました。
当時、株式市場ではこの政府支援に対して「Too Big to Fail(大きすぎてつぶせない)」や「モラルハザード(経営難に陥っても政府が助けてくれるという気のゆるみ)」という用語が盛んに取り沙汰されたことを記憶しています。現在の半導体産業に対する政府の支援は、「産業の復活」という“前向き”なものであり、倒産回避という“後ろ向き”なものではないため、当然、内容は異なります。ただ、「政府による民間企業への支援」という点では同じでしょう。
ラピダス以外にも、政府は半導体関連産業全体に積極的な支援を行っています。2021~2026年度の6年間で、AIや半導体分野における政府支援額は合計7兆円超まで膨れ上がる見通しです。前述のように、これらの支援は政府の強い意志に基づいており、今後も半導体産業には追い風が吹き続けるのは確実でしょう。株式相場での人気に業績が追い付かず、一部関連銘柄には指標的な割高感は出ていますが、当面、株式市場の中心的な存在になる可能性が高いと思われます。
今後は、日本産業の強みのひとつである「素材・材料」を手掛ける企業に買いが広がる展開が予想されます。すでに半導体関連株は幅広く買われていますが、まだPER(株価収益率)が一桁~10倍台など割安な銘柄も見受けられるため、2026年はこれら関連銘柄の中から大幅に値を上げる銘柄が出てくることが予想されます。ただし、関連相場の株価全体が押し上げられている分、大きなリスクを抱えているのも事実。そのため、ポートフォリオが半導体関連株に集中するような状況は避けるべきでしょう(同リスクについては、「後編」で詳述します)。