はじめに

日経平均株価が過去最長となる16営業日連続で上昇するという歴史的な上昇を見せた2017年。この勢いは、新しい年も続いていくのでしょうか? 日本株相場に詳しい松井証券のシニアマーケットアナリスト、窪田朋一郎さんに2018年の株式市場の見通しについて話を伺いました。


17年の上昇に乗れなかった人にも、十分チャンスはある

—— 昨年を振り返って、2017年は株式市場にとってどんな1年だったでしょうか?

窪田(以下、同様): 瞬間的に急落する局面もありましたが、好調なアメリカ経済の恩恵も受けて日本企業の業績は拡大し、収益性も改善したことから、大きく買われた1年となりました。特に秋以降の上昇は、過去最長となる16営業日連続の上昇や、バブル後の戻り高値更新など、記録に残る上昇相場となりましたが、決して割高な水準ではなく、企業収益に裏付けされた株高でした。

—— 個人投資家も大きな利益を得た人が多かったのでは?

そうとも言い切れないのが残念なところです。特にアクティブに短期売買するタイプの投資家の中には、上がりすぎと判断して売りから参加する人も多く、損失を抱えるケースも目立ちました。この背景には、日本の個人投資家の間でトランプ大統領に対する評価が低く、ここまでの上昇を予想できなかったことと、また、根強い「安くなったら買い、高くなったら売る」という逆張り志向が裏目に出てしまった格好です。外国人投資家が買い、個人投資家が売るという、両者の姿勢の違いが鮮明となった相場でしたが、個人投資家の中でも中長期でじっくり保有するタイプの方は、大きな利益を上げた人も多かったようです。

—— 2018年は、どんな相場になるでしょうか。17年の上昇に乗れなかった人に巻き返しのチャンスはありますか?

少なくとも18年前半の世界経済は引き続き堅調で、日本株の予想EPS(1株あたり利益)もさらに上昇し、株価も上昇が続くことになりそうです。すでに割高な水準に達している欧米の株式市場に比べると日本株はまだ割安で、外国人投資家が買ってくる余地も十分あります。

ただし、後半には息切れしてしまう可能性もあると見ています。政策次第という面もありますが、年後半にかけて株価が調整局面を迎えると予想しています。

18年前半には日経平均が2万5,000円をつける局面も

—— どういった要因で調整局面入りするのでしょうか?

17年を振り返ると、金融引き締めの姿勢を取るアメリカ・FRBも実際の利上げはスローペースでしたし、日銀や欧州のECBも金融緩和を続けていたため、株式市場には買いに対する安心感が広がっていました。

しかし、アメリカで減税法案が成立したこともあり、世界的に景気が過熱し過ぎれば、いずれ引き締めが必要になります。アメリカは利上げのペースを落とさないまま、バランスシートの圧縮強化を続ける可能性は十分あるでしょう。欧州の量的緩和も縮小傾向にあり、来年中にはいつ緩和をやめる姿勢を打ち出してもおかしくない。日本だけは日銀が緩和継続の姿勢を明確にしていますが、その一方で国債の買い入れ額は減額させており、実質的には緩和縮小の傾向にあります。現在の株高は多くを金融政策に依存した相場なので、各国が金融引き締めや緩和縮小に舵を切れば株式市場にブレーキがかかり、下落に転じてもおかしくありません。

—— 金融引き締めが最大のリスクということですね。他に警戒しておきたいことはあるでしょうか。

18年から19年にかけてサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが上場するという観測が強まっており、それに向けて原油価格を引き上げるバイアスが高まりやすくなっています。これは日銀が掲げる物価上昇率2%の目標達成には追い風ですが、景気と関係なく物価が上がる悪い性質のインフレを引き起こしかねず、日銀の金融政策変更の引き金になる可能性もあります。

また、中国が金融引き締めに動く可能性があることと、北朝鮮情勢にも引き続き注意が必要でしょう。

—— 具体的に、日経平均株価はどのぐらいのレンジを予想されていますか?

年前半に2万5,000円を試す局面も考えられますが、後半の調整局面では2万円を切る可能性も視野に入ります。特に、株高を支えている日銀のETF買いが減額されたり、ECBが量的緩和を終了させたりするようなことがあれば、瞬間的には1万8,000円程度まで下げることも十分考えられます。単純に年初と年末を比較すれば、下落の年になるかもしれません。

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