はじめに

株を持っていないとアベノミクスの恩恵は受けられない

—— 18年は積極的な投資は控えた方がいいということになりますか?

それでも株式投資はした方が有利と考えています。というのも、アベノミクス下で企業業績や利益は拡大していますが、利益の源泉となるべき売り上げが大きく伸びているわけではないからです。どちらかといえば総人件費を削って利益を押し上げている側面が強く、総体としての労働者の賃金はあまり上がっていません。企業が賃金を削って得た利益はどこに向かったのかというと、自社株買いや配当を通じて株主へ流れています。要するに今はなんらかの形で株式投資をしていないと、アベノミクスや好景気の恩恵を受けられなくなっているのです。

—— 業種や投資テーマではどんなところに注目されていますか?

まずはEV(電気自動車)ですね。17年も小型株を中心に関連銘柄が盛り上がりましたが、ガソリン車からEVに転換する世界的な流れは始まったばかり。今後は小型株だけでなく、大型株への投資でも中長期的な恩恵を受けられるようになるのではないでしょうか。特に技術の核となる電池やモーターを中心に、引き続き注目されやすい相場が続くでしょう。息の長い投資テーマになりそうなので、中長期でじっくり投資される方には特に検討の価値があるでしょう。

—— もう少し短い時間軸で投資する人向けのテーマはありますか?

オンライン動画配信サービスですね。国内勢の業者にとってこれまでは先行投資がかさんでいましたが、今後はいよいよ収益化が視野に入ってきます。

より短期でアクティブに投資する層には、ブロックチェーン関連に投資妙味がありそうです。17年はビットコインが凄まじい上昇を見せ、仮想通貨そのものや関連銘柄が買われましたが、18年は仮想通貨の基盤となるブロックチェーンの技術を活用した新サービスの登場が本格化するでしょう。オンライン上で安全に契約や決済ができる「スマートコントラクト」が、新しい社会インフラとして活用されるステージが始まろうとしています。関連ニュースや新サービスがリリースされるたびに、関連銘柄が急騰する局面がみられるでしょう。特にデイトレードをする人には魅力的な投資対象となりそうです。

—— ビットコインの急騰は17年の金融市場を賑わせたニュースでしたね。

ビットコインに投資した人はかなりの利益を上げたでしょうが、株の利益と違って雑所得となるので、他の金融商品と損益通算ができないほか、儲かれば儲かるほど高い税率がかけられる点がデメリットです。投資の利益にかかる税金というのは意外と大きいので、リスクの大きさと手元に残る利益という視点で見ると、ビットコインはそれほど有利な投資でもないような気がしています。

一方で、株や投資信託を投資対象とするなら、iDeCoやNISAといった利益に課税されずに投資できる有利な制度があります。NISAは投資の利益が非課税となる制度で、個別株にも投資できる一般NISAと、投資信託の積み立てに特化したつみたてNISAがあります。さらに「自分年金」づくりを目的としたiDeCoは全額が所得控除の対象になるので、所得税や住民税を軽減できます。こうした制度を使えばアベノミクスの恩恵を受けながら有利に投資ができるので、利用しないともったいないと思いますね。

—— 2018年の株式投資はどんな戦略で望むべきでしょうか。後半に調整局面が来るのであれば、それを待って投資すべきですか?

それができれば苦労しないんです(笑)。調整や急落局面は、だれも買えないから株価が下がるのです。下がったら買おうと思っていても、渦中にいると怖くて買えないと思っていた方がいいですよ。

安くなったチャンスを活かすには、何があっても淡々と買い続ける積み立て投資がおすすめです。下落局面を取りこぼすことなく安いところを買えますし、反転した時の上昇も取れる。つみたてNISAを使えば税金もかかりません。

そもそも「下がったら買う」という逆張り一辺倒の考え方からは、そろそろ脱却すべき時かもしれません。高値を更新していく相場では、「上がっているから買う」「下がりだしたら売る」という順張り投資のほうが、成功率は高くなります。 

—— 個人投資家は順張り投資のスキルをマスターする必要がありそうですね。

単純な順張りも、実はかなり難易度が上がってきています。近年はAI(人工知能)を活用したアルゴリズム売買が台頭しており、特定のキーワードに反応して瞬時に大量の売買注文が執行されて株価が急激に動く傾向が強くなってきました。たとえば、「下方修正」といったキーワードが発表されると、即座に大量に売られて急落するようなイメージです。こうしたアルゴリズム売買では、株価が瞬間的に過剰反応し、翌日には何事もなかったかのように戻ることも多いので、逆に張った方が、成功率が高いこともあります。

要は、順張りか逆張りかというより、今相場を動かしている主体が何なのかを考えるといいのかもしれません。

—— 一筋縄ではいかなくなっているのですね。

あまり難しく考える必要はありませんよ。初心者の方は長期の積み立て投資で資産形成は可能ですし、中上級者の投資家にとってはチャンスの多い相場が続くでしょう。自分に合った方法で、株式投資を楽しんでいただきたいですね。

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