はじめに

高島屋の異例の対抗策

アクティビストの攻勢に対し、高島屋側も黙ってはいませんでした。1月、会社側は非常に珍しく、かつ資本市場を驚かせる対抗策を打ち出しました。それが「転換社債(CB)の買入れ消却」です。転換社債(CB)は、利息がつく「社債」としての性質を持ちながら、投資家が望めば「あらかじめ決められた価格で株式に交換できる権利」がついた特殊な債券です。

企業側は低い利息で資金調達ができ、投資家は株価が上がれば株に換えて利益を得られるメリットがある一方で、投資家が株に換えると、市場に流通する株の数が増えて、株の希薄化が起きるため、既存株主からは嫌がられます。

高島屋は、市場に残っていたCB(発行額面600億円)を、時価にプレミアムを乗せてまで買い戻し、そのまま消滅させることを決めました。これにより、将来的に株が増えて1株の価値が下がるリスクを「自腹を切って」消し去ったのです。

この買戻しに伴い、高島屋は2026年2月期の純利益予想を400億円から130億円へ大幅に下方修正し、389億円もの特別損失を計上します。通常の経営判断なら「大幅下方修正」は株価暴落の材料ですが、今回は逆でした。市場はこれを「アクティビストの圧力を逆手に取り、既存株主の価値を守るための断固たる決意」と評価し、株価はさらに一段高となったのです。

ここで「PER48倍」の歪みが解けます。特別損失で分母となる純利益(1株当たり当期純利益:43.54円)が激減したため、PERが跳ね上がったのです。もし特損がなければ、1株益は当初見込みの約136円ですので、PERは17倍程度となり、そこまで極端な異常値ではなくなります。いっけん高く見えるPERに騙されてはいけません。

第2の高島屋は現れる?

百貨店業界は、莫大な資産(土地・建物)を持ちながら、株価が解散価値を下回る「PBR1倍割れ」の企業が多いのが特徴です。東証の改善要請もあり、経営改革を迫るには絶好のターゲットです。

高島屋と同じく、銀座や新宿に超優良不動産を持つ三越伊勢丹ホールディングスなどにも、同様のアクティビストが忍び寄るのではないかという思惑が広がっています。株価が低迷しているだけに投資チャンスがありそうです。

今の高島屋は”プレミアム価格”か

気になるところはこれから高島屋のお祭りに乗っていいかどうかです。現在の株価は、業績の拡大をともなった将来への期待買いではなく、アクティビストの介入という「マネーゲームの参加料」が含まれたプレミアム価格といえます。

アクティビストが売り抜けを始めた瞬間、支えを失った株価が急落するリスクがあることはくれぐれも忘れてはいけません。すでに保有している場合は、アクティビストの保有比率が低下したというニュース(変更報告書)には細心の注意をはらいましょう。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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