はじめに
先駆者たちが築いた「1兆ドル」の系譜

ここからは既存の1兆ドル企業をいくつかご紹介しましょう。 物価上昇を考慮すると米石油会社のスタンダード・オイルなどが1兆ドル相当に達していたとの指摘もあります。また、2007年には中国の国有石油会社であるペトロチャイナが上場初日に1兆ドルを突破しましたが、これは政府が株式の大部分を保有していたことによる特殊なケースであり、純粋な市場評価とは区別して考えるべきでしょう。
【アップル】世界初、1兆ドルに到達した「強固なエコシステム」
一般的に、時価総額が1兆ドルを超えた「世界初の上場企業」となったのはアップルです。2018年8月2日に時価総額1兆ドルの大台を突破。当時の本質は、単にiPhoneが売れていることだけではなく、「高付加価値モデルによる単価上昇」「エコシステムによる囲い込み」「巨大な自社株買い」という、資本効率と収益の粘着性にありました。投資家は「景気循環に左右されにくいキャッシュ創出装置」としての成熟を、1兆ドルという評価に乗せたと整理できます。
【アマゾン】小売から「生活・企業インフラ」への質的転換
次に到達したのは、アマゾンドットコムです。2018年9月に1兆ドルへ到達。評価の源泉は小売の売上規模ではなく、クラウド(AWS)に代表される「企業インフラ」領域の拡大でした。小売が薄利でも、クラウド・広告・サブスクなど、複数の高収益ドライバーが同時に伸びる構造は、景気や競争環境が変わっても利益を守りやすい強さがあります。ただ、アマゾンは時価総額を1兆ドル失った最初の企業でもあります。業績や株価次第で1兆ドルの地位から転落することもあるという現実は、投資家として留意すべき点です。
【マイクロソフト】企業のIT投資に組み込まれた「粘着質な利益」
続いて2019年4月に到達したマイクロソフトは、クラウドと法人向けソフトの強みを掛け合わせています。の強みを掛け合わせています。企業のIT投資に組み込まれる形で伸びたため、収益の再現性が高く、さらにサブスクリプション型への移行が進むことで、景気が鈍化しても急落しにくい粘着質な利益が評価されました。投資家心理としては、「成長」と「安定」が同居する稀有な大型株としてプレミアムが乗った局面でした。
【サウジアラムコ】圧倒的な「現在のキャッシュフロー」という実力
2019年12月11日の上場初日に時価総額が約1.88兆ドル規模に達したのはサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコです。当時のアップル(約1.2兆ドル)を上回る世界最大の上場会社になりました。このケースは米メガテックと性格が異なり、「国家の資源収益そのものを上場市場に載せる」構図です。原油・天然ガスという基礎財に対する世界需要と、圧倒的な生産コスト競争力、そして配当政策を含む株主還元への期待が、巨大評価の土台になりました。つまり、テクノロジーが未来の成長で評価されるのに対して、こちらは現在のキャッシュフローの規模が評価の中心だった点が大きな違いです。