はじめに

【アルファベット】最大級のユーザー接点が生む「データの入口」

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2020年1月16日に1兆ドルへ到達した米4社目の1兆ドル企業はアルファベットでしたGoogleの検索広告という成熟事業が依然として強いキャッシュを生み、動画やクラウドなど周辺領域にも成長余地を残していたことが、到達の決め手となりました。投資家目線では「広告景気に左右される」弱点よりも、世界最大級のデータとユーザー接点を握る入口の強さが優位に評価されたタイミングでした。特にデジタル広告はネットワーク効果が働きやすく、規模が大きいほど効率が上がるため、成熟してもなお利益率が落ちにくいという構造が、1兆ドル評価を支えたと考えられます。

【エヌビディア】AI時代のボトルネックを支配する「徴税権」

ほかにメタやテスラも1兆ドルに到達しましたが、個人的に強く印象に残っているのは2023年5月30日に到達したエヌビディアです。時価総額の伸びがとにかく顕著でした。この到達は「AIブーム」という言葉で片付けると浅くて、投資家が見ていた本質はAIの計算資源のボトルネックを握った点です。金におけるツルハシのような存在であるGPU。生成AIや大規模モデル開発が広がるほど、GPUとその周辺(ソフトウェア・エコシステム含む)への需要が集中しやすいと言えます。参入障壁が高く、顧客が一度採用すると置き換えにくい構造も評価を後押ししました。つまり、単なる半導体の景気循環ではなく、産業構造の変化(AI化)の「徴税権」を持つ企業として再定義されたことが、1兆ドルの決め手でした。

【バークシャー・ハサウェイ】急成長とは真逆の「資本配分の優秀さ」

さらに、2024年8月に時価総額1兆ドルを突破したバークシャー・ハサウェイは、「投資の神様」ウォーレン・バフェット氏が率いる企業として知られています。マグニフィセント7(米主要テック7社)に次ぐ1兆ドルクラブ入りであり、米国の非ハイテク銘柄としては初の快挙となりました。その要因はメガテック型の急成長とは対照的で、徹底した「資本配分の優秀さ」が市場から評価された結果といえます。

保険を核に、キャッシュ創出力の強い事業と上場株投資を束ね、景気変動があっても持続的に資本を増やす設計が市場から信認された結果と言えます。金利環境の変化に対しても柔軟に運用できる点が、巨大ディフェンシブ資産としての位置づけを強め、1兆ドル到達の背景になりました。

1兆ドル企業を読み解くキーワードは「代替不可能性」

これらの企業に共通するのは、単一の商品が売れているという点ではありません。むしろ、エコシステムを構築し、顧客や企業活動がそこから離れにくい構造を作り上げている点にあります。アップルはハードとサービスを組み合わせ、利用者を囲い込むことで安定した収益基盤を築いています。マイクロソフトはクラウドと企業向けソフトウェアを通じ、世界中の企業活動に不可欠な存在となりました。エヌビディアはAI時代の中核部品を握ることで、産業構造そのものの変化を収益に変えています。

これらに共通するのは、「代替されにくい地位」と「価格決定力」です。1兆ドル企業とは、競争に勝った企業というより、競争のルールそのものに影響を与えられる企業だと言っても過言ではありません。

個人投資家にとっての「1兆ドル企業」の活用法

個人投資家の立場から見ると、1兆ドル企業は「もう成長しない巨大企業」に見えるかもしれません。しかし、実際にはそう単純ではありません。重要なのは、株価が上がるかどうかではなく、「どの役割でポートフォリオに組み込むか」です。

1兆ドル企業は、急成長株というよりも、ポートフォリオの土台、あるいは市場全体の成長を享受する中核として機能します。過剰流動性相場では、お金が集まりやすいと言う側面もあるでしょう。値動きは相対的に穏やかでも、長期で見れば複利効果を着実に積み上げていく存在といえそうです。

また、ウォルマートの例が示すように、1兆ドル企業は必ずしも最先端テクノロジーだけから生まれるわけではありません。生活必需、インフラ、エネルギー、金融といった分野でも、構造的優位性を持つ企業が評価されれば、同じ道をたどる可能性があります。

1兆ドルは「ゴール」ではなく「新たな問い」の始まり

最後に強調したいのは、時価総額1兆ドルはゴールではない、という点です。市場は常に先を見ています。1兆ドルに到達した瞬間から、その企業は「次に何を成し遂げるのか」を問われ続けます。

ウォルマートが示したのは、成熟企業であっても、事業構造を変え、市場の期待に応え続ければ評価は更新される、という現実です。個人投資家にとって1兆ドル企業とは、「安心感の象徴」であると同時に、「市場がいま、何に価値を見出しているのか」を読み解く重要なヒントでもあります。

この視点を持って企業を見ることで、単なる時価総額の大きさではなく、長期投資における本質的な価値が、より立体的に見えてくるはずです。この記事が皆様の投資の少しでも参考になれば幸いです。

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