はじめに

判断を進めるために必要なのは「正解」より「整理軸」

50代後半〜60代前半の人は、決して情報弱者ではありません。年金制度や老後資金の目安額など、一度は調べた経験がある人がほとんどでしょう。

それでも判断が進まないのは、「いくらあれば安心か」「どうなれば納得なのか」といった自分なりの基準が整理できていないからです。

この時期に意識しておきたいポイントは次の通りです。

・定年後も働く目的は何か(収入、生活リズム、社会とのつながり)
・毎月いくらあれば生活として納得できるのか
・収入が減る代わりに、何を大切にしたいのか

近年は「できるだけ長く働くことが望ましい」という論調も広がっています。その影響もあり、定年後に働かない、あるいは一度立ち止まる選択をすることに、どこか気が引けると感じる人もいるかもしれません。

実際に相談を受けた中には、「周囲が働き続けている中で、自分だけ何もしないのは不安だ」と話していた方もいました。ただ、その方は体調やこれまでの働き方を踏まえ、いったん仕事から距離を置く選択をしました。現在は、社会人向け公開講座で、以前から関心のあった歴史を学んでいます。

収入を得る働き方ではありませんが、「何もしない時間」ではなく、自分なりに社会と関わり、生活リズムを保つ形を選んだといえます。働き続けるかどうかだけで判断するのではなく、どのように時間を使い、どんな形で社会とつながるかを考えることも、選択肢の一つです。

制度や平均額は参考情報にすぎません。自分にとっての「ちょうどよさ」を整理することが、判断を進める土台になります。

最後に、50代後半からの不安と向き合う際に役立つ視点を整理します。


1つ目は、「いつまで働くか」ではなく「どう関わり続けたいか」を考えること。
2つ目は、夫婦や家族と数字を共有する前に、まず自分の「ちょうどよさ」を言葉にすること。
3つ目は、老後資金を一括で捉えず、「年金+不足分」という形で分解すること。


不安は、消そうとするとかえって大きくなります。分解し、整理し、自分の言葉で捉え直すことで、「考えられる不安」に変わります。定年が見えてきた今だからこそ、自分なりの判断軸を育てていく時期といえるでしょう。

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