はじめに
2026年の株式市場のキーワードの1つが「政策保有株の売却・縮減」になりそうです。
政策保有株とは、純粋な投資目的ではなく、取引先との関係維持などを目的に保有する株式のことです。企業同士が互いに保有し合う「持ち合い」が代表的ですが、近年その比率は低下傾向にあります。1990年頃は上場株式の時価総額のうち、約3割を政策保有株式が占めていました。
政策保有株解消の流れを加速させている背景には、東京証券取引所の市場再編に伴う「流通株式」の定義見直しがあります。さらに、2024年に金融庁が損害保険大手4社に対して政策保有株の売却を急ぐよう求めたことも、大きな要因として挙げられます。これは、株式の持ち合いによる企業間のなれ合いが不正行為を招いたとして、金融庁がメスを入れた結果といえます。2025年に提出された各社の有価証券報告書によると、政策保有株の売却額は前年比5割増の9兆7,655億円と、2年連続で過去最高を更新しています。
加速する「政策保有株」解消の流れ
そうした中で、トヨタ自動車と任天堂が金融機関などの保有する政策株の早期解消を計画していることがわかりました。トヨタは、三菱UFJや三井住友FGなどのメガバンクが保有するトヨタ株(約3兆円規模)を、数年かけて自社株買いなどで取得・解消する計画を進めています。 任天堂も、同社株を保有する京都銀行やDeNA、野村信託銀行やりそな銀行による株式の売り出しに応じる方針を公表しました。
企業が株式を持ち合うメリット・デメリット
そもそも政策保有の歴史は、戦後の財閥解体にまでさかのぼります。旧財閥系企業が、外資企業からの買収を防ぐために始めたと言われています。企業間で相互に株式を持ち合う場合が一般的ですが、どちらか一方の企業だけが保有する場合もあります。
株式を持ち合う最大のメリットは、安定した株主を得られることです。経営陣の合意のない敵対的買収を防ぎ、経営を安定させることができます。また、企業間の関係性が良好に保たれるため、新たな事業拡大もスムーズに進みやすくなります。
一方で、デメリットも存在します。持ち合い株は長期保有されるため、長年にわたり資金が滞留する「資本の空洞化」が起こってしまいます。資本が事業の成長のために使われず、ただ保有するためだけに使われていては、効率的な経営が行われているとは言えません。また、互いに保有し合っている場合は良いのですが、片方のみが株式を保有している場合には、企業間で不公平な力関係が働き、主従関係が生まれてしまう恐れもあります。
こうした背景から、海外投資家は長年にわたり「政策保有株は資金が有効活用されない『死に金』であり、企業のROE(自己資本利益率)を低下させる要因だ」と警鐘を鳴らしてきました。今回、日本の大企業2社が政策保有の解消に向けて大きく動いたことは、海外投資家からも高く評価されるはずです。そしてこの動きに追随し、政策保有の売却・縮減を急ぐ企業は今後さらに増加するでしょう。