はじめに
新NISAの開始や株価の上昇もあり、「もっと投資に資金を回したい」と考える人が増えています。確かに資産形成のために投資を活用することは大切ですが、投資ばかりに目が向いてしまうと家計全体のバランスを崩してしまうこともあります。
大切なのは、何に投資するかという“部分最適”ではなく、家計全体を見渡した“全体最適”の視点です。投資と上手に向き合うために、まず確認しておきたいポイントを整理してみましょう。
投資への一極集中が招く「家計のアンバランス」
巷では、資産形成に関する情報があふれています。様々な場所で見かける投資を促す宣伝、SNSでもたくさんの方が情報発信をしています。
国も資産運用立国を掲げ、国民の資産形成を後押ししようと懸命になっていますから、「投資」をすること自体が悪いことではありません。しかし、行き過ぎは考え物です。
「S&P500一択でしょう」という考えには違和感がありますし、「分散投資だから」と方針の異なるバランスファンドを複数本購入している方は、分散の意味を勘違いされていると心配になります。しかし、もっとも気になるのが「投資」に集中するあまり家計全体のバランスがくずれている傾向が強くなっていることです。特に最近では、「インフレ」に抵抗するためには「投資しかない」とおっしゃって、手元資金をすべて投資に回そうとされる方もいます。
手元資金をすべて投資に回してはいけない理由
長期運用を目指すということは、お金の流動性が低くなるということです。投資信託の場合、解約してから資金が戻るまでには通常数営業日(商品によっては1週間程度)かかります。ましてや値動きがあるものです。資金用途が発生した際に、期待通りに利益が出ているとも限りません。投資に回して良いお金とそうではないお金を区別する必要があります。
緊急用の資金としては、少なくとも基本的な生活費の2~3ヶ月分を普通預金に常に残高として持つことは重要でしょう。なぜ、数ヶ月分の現金の用意が必要かというと、病気やけが、あるいは就労のリスクを補うためです。病気等で働けなくなっても、健康保険の傷病手当金により標準報酬日額の3分の2相当額が支給されますが、給付までには一定の時間がかかります。標準報酬日額とは、給与の額を30日で割った金額とまずは理解してください。
高額療養費制度があるとはいえ、医療費の負担は軽くはありません。また会社を辞めることになった時に受け取れる基本手当(いわゆる失業手当)は、支給開始まで待機期間があります。ただ、これらの補償は「被用者保険」に加入していることが条件ですから、自営業の方などはもう少し余裕をもった現金の準備は必要でしょう。
それ以外にも想定外の支出があるかもしれません。そのため、一定額はいつでも引き出し可能な普通預金口座に残高として置いておく必要があります。この準備なくして、手元資金すべてを投資に回すと、生活破綻を招く可能性が高まります。
5年~10年程度の間に使う予定があるお金も投資には回せません。従って元本割れのリスクがない定期預金などを利用して準備します。5年後に100万円を使う予定となれば、月々16,000円を積立預金とするのも良策です。
1年間は解約できませんが、個人向け国債も良い選択肢です。直近では、変動10年は1%台前半、固定5年は1%台半ばなどとなっており、安全性の高い運用先として注目されています。また定期預金については、キャンペーンなどを利用すると、ネット銀行では1%前後の金利が提示されるケースもあります。