はじめに
米国のイラン攻撃により、株式市場は大荒れです。一方的に下落してくれるならまだしも、上げたり下げたりと乱高下。日経平均株価は1日で2,000円、3,000円、4,000円と上下しており、まさにジェットコースター相場。衆議院選挙での自民党圧勝により沸いた高市相場で、「3月中には6万円も圏内でしょう」と多くの専門家が語っていたのはなんだったのか? 狐につままれたような気分です。日中、かけっぱなしのラジオのマーケット情報では「全面安」という言葉が何度も聞かれ、証券口座を開くのをためらわれます。
しかし、そんな阿鼻叫喚の中でもアパレル関連株は、案外強いことに驚きます。日経平均株価が2月26日につけた高値59,332円から、現在3月9日の終値52,728円と約12%下落しているのに対して、ユナイテッドアローズ(7606)-2%、ワールド(3612)-5%と下げ幅が小さく、アンドエスティHD(2685)に関しては+4%と逆行高となっています。しかし、アパレル界の大ボス・ファーストリテイリング(9983)は、2月27日の高値69,030円から-9%の下落で、アパレル内ではまさかのひとり負けといえます。
なぜユニクロだけがひとり負けするのか?
ファーストリテイリングの業績だけが悪化しているのでしょうか? 1月8日に発表された2026年8月期第1四半期決算は、売上収益1兆277億円(前年比+14.8%)、事業利益2,056億円(前年比+31%)と堅調で今期は5期連続で過去最高益を更新見込みです。3月3日に発表された2月の既存店売上も前年比104.6%で業績に陰りは見られません。それなのに売られている理由は、非常にシンプルです。
ファーストリテイリングは、日経平均株価の構成銘柄であり、なおかつその中でも圧倒的な影響力を持っています。時期によっての変動はありますが、約10%前後をたった1社で占めており、つねにその影響度はトップクラス。日経平均は225社で構成されているため、平等に割れば1社あたりの影響力は「約0.44%」のはずです。しかし、ファーストリテイリングはその20倍以上のパワーを持っています。つまり、日経平均が大きく下がる日のニュースで「日経平均〇〇円安!」と騒がれているとき、その下落幅の1割はファーストリテイリング1社が引き下げていると言っても過言ではないのです。
なぜそこまで寄与度が高くなるのか? それは日経平均株価指数の計算方法に答えがあります。日経平均株価は、各銘柄の株価の水準を調整した上で、一定の除数(じょすう)で割って求めます。基本的には株価が高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすくなるのが特徴。ファーストリテイリングの株価は6万円台で構成銘柄の中でもつねに上位に君臨しており、影響力は絶大です。
となれば、ファーストリテイリングが大きく下げたから、日経平均株価が大きく下がったのでしょうか? それは半分合っており、半分違っています。というのは、海外の機関投資家が「日本の相場が危ない、日本株全体を売ろう」と考えたとき、彼らは個別の銘柄を一つ一つ売るような面倒なことはしません。日経平均先物という、日経平均全体を丸ごと売買できるパック商品をドカンと売ります。先物が売られると、裁定取引という機械的なプログラムが働き、連動して日経平均の採用銘柄(現物株)が自動的に売り浴びせられます。この時、日経平均の約10%を占めるファーストリテイリングは、業績に関係なく、自動的に猛烈な売り圧力を受けます。これは時価総額が大きく流動性が高すぎるゆえに、逃げ出したい巨額マネーの出口にされてしまう宿命とも言えるでしょう。