はじめに

2026年2月28日、米国とイスラエルがイランへの大規模軍事攻撃を開始しました。連日流れる衝撃的なニュースに、「自分の資産は大丈夫だろうか」と不安を感じている方も多いかもしれません。

翌日にはイラン最高指導者ハメネイ師の死亡が伝えられ、イランは周辺国の米軍基地への報復攻撃を開始しました。「株を売った方がいいのか」「金(ゴールド)を買うべきなのか」、その判断に迷うのは、ごく自然なことだと思います。

FPとして多くの方のお金の相談を受ける中で、有事のたびに感じるのは「正しい情報より、冷静な判断軸を持てているかどうか」の差が大きいということです。本記事では、今起きているホルムズ海峡封鎖の問題を軸に、「有事の投資判断」について解説します。


「ホルムズ海峡の封鎖」は、ガソリン代や電気代に直結する

まず、「ホルムズ海峡」という名前を初めて聞いた方もいるかもしれません。ここは、中東の原油をタンカーで運び出す際に必ず通らなければならない、世界でも重要な場所の一つです。

世界の原油の約20〜25%がこの海峡を通って輸出されています。そして日本が輸入する原油の約70〜90%もここを経由しています。つまり「ホルムズ海峡が止まる=日本へ届く原油が激減するリスク」を意味します。

3月2日、イラン革命防衛隊はホルムズ海峡の封鎖を宣言しました。日本郵船や川崎汽船も海峡通行を停止しており、実際に原油の流れが止まりつつある状況です。

私たちの生活に直結するのはガソリン価格です。WTI(原油先物価格)は3月2日朝から急騰し、一時は1バレルあたり75ドルに達し、先週末から約12%急騰しました。その後も上昇は続き、3月6日にはWTIが2023年10月以降初めて1バレル90ドルをつけ、週間上昇率は約35%に達しています。

原油が上がれば、ガソリン代だけでなく、電気代、食品の値段、物流コストなど、生活のあちこちに影響が出てきます。「中東の戦争」は、決して遠い国で起きている話ではないのです。

原油高が株価を下げる仕組み

原油価格が上がると、なぜ株式市場が揺れるのでしょうか。難しく聞こえますが、仕組みは3つのステップで整理できます。

ステップ1. 原油高→企業のコストが上がる
電気代・輸送費・原材料費などが上昇し、企業の利益が圧迫されます。利益が減れば、株価は下がりやすくなります。

ステップ2. 物価上昇→金利が上がる
モノの値段が上がると、国は「金利を上げてインフレを抑える」という対応を取ります。金利が上がると企業はお金を借りにくくなり、設備投資が減り、経済全体の成長が鈍ります。

ステップ3. 最悪の場合「スタグフレーション」へ
インフレ(物価高)と景気後退が同時に起きる状態を「スタグフレーション」と呼びます。日本経済新聞は、今回の衝突が長期化すれば、このスタグフレーションが現実味を帯びると報じています。株式市場にとって、これは最も対処が難しい局面のひとつです。

実際に今回の市場でもこの連鎖が起きました。3月2日の東京株式市場で日経平均株価は前週末比793円(1.35%)安の5万8057円で終えました。朝方には一時1500円を超える下げとなっています。さらに3月4日には2033円安と、下げ幅が史上5番目の大きさとなりました。

ただし、翌3月5日には前日比958円高と急反発しています。有事の急落の後には、こうした反発も起きやすいのです。「下がったからすぐ売る」という判断がいかに危ないか、おわかりいただけたのではないでしょうか。

「株を売るべきか、そのままにするべきか」

では、実際にどう判断すればいいのでしょうか。ここが多くの方が一番悩む部分だと思います。私がお客様に相談を受けたとき、まず確認するのは「その投資資金は、いつ使う予定のお金ですか?」ということです。

5年以上使わないお金であれば、基本的には売らない方が合理的です。歴史を振り返ると、湾岸戦争(1990年)やイラク戦争(2003年)など、過去の有事でも株価は短期的に急落しましたが、その後は回復・上昇した事例が多くあります。パニックで底値売りをしてしまうと、その後の回復の恩恵を受けられなくなります。

三井住友DSアセットマネジメントの見立てによると、今後は「1.短期収束で回復」「2.膠着状態で下値不安が徐々に後退」「3.長期化で大幅安」の3つのシナリオが考えられます。どのシナリオになるかは、今の時点では誰にもわかりません。だからこそ「どのシナリオでも耐えられる状態にしておく」という発想が、有事の時には何より大切です。

一方で、次のどれかに当てはまる方は、今の局面でリスクを見直すことも選択肢に入ります。


1.投資資金と生活費が混ざっている
2.1〜2年以内にまとまったお金が必要な予定がある
3.現在の下落だけで、とても不安を感じている


「長期投資だから大丈夫」という言葉は正しいですが、精神的に耐えられない水準のリスクを取り続けることは誰にとっても良くありません。「どこまで下がったら困るか」を自分で把握しておくことが、有事の本当の備えになります。

また、新NISAのつみたて投資をしている方は、そのまま続けることが基本的に正解です。価格が下がった局面での積立は、長い目で見ると「安く買えるチャンス」です。有事のたびに止めてしまうと、最も安く買えるタイミングを逃し続けることになってしまいます。

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