はじめに
「初期コスト増」はどこまで吸収できる?
取り戻せるお金があるとはいえ、省エネ性能を高くすると、建築費は上がりやすくなります。そこで、省エネ基準適合住宅とZEH水準住宅の光熱費差をもとに、30年間住み続けた場合の参考値を、物価上昇による貨幣価値の変化をふまえ試算しました。

取得時には補助金があり、住宅ローン減税でも控除上限が広がります。さらに、住み始めてからは光熱費削減効果が積み上がります。初期費用だけを見ると高く感じられても、家計全体でみれば差額の一部は吸収できる可能性があり、住み続ける前提なら単純に「損」とは言い切れなさそうです。
もっとも、これはあくまで一つの試算結果です。住宅ローン減税は13年かけて戻るお金で、光熱費削減も長い時間をかけて少しずつ積み上がるものです。将来を保証するものではない点には注意してください。
家計メリットと将来の資産価値は別問題
省エネ性能を高めることは、補助金や減税、光熱費削減といった形で家計のメリットともなります。ただし、それはあくまで「住み続けた場合」の話です。売却することを前提とするなら、話は変わります。
住宅の将来価値は、省エネ性能だけでなく、立地や地域の需給環境、今後の制度改正や市場で求められる水準の変化にも左右されます。今の時点では高い評価を得ていても売却時には評価されない可能性もあります。
今後は省エネ性能そのものが市場で見える形になり、2030年に向けて基準引き上げの流れも示されています。かつて1981年の新耐震基準を境に、旧耐震の住宅が流通市場で大きく不利になったように、省エネ性能でも同様の線引きが進みつつあります。今は十分高い水準に見えても、将来さらに上位基準が標準化されれば、評価のされ方は変わる可能性があります。
だからこそ、省エネ性能をどこまで追求するかは、今を基準とした家計メリットだけではなく、今後の住まい方や住み始めたあとの家計の余力、ご自身にとっての優先順位を天秤にかけながら判断したいところです。