はじめに
中東情勢の緊迫によるナフサの価格上昇により、様々な企業が値上げや一部製品の新規受注の停止を公表する事態が相次いでいます。遠い国の出来事のように思えるニュースですが、実は住宅設備から食品、電気代にいたるまで、私たちの家計に直結する大きな問題です。なぜ今、一斉値上げが起きているのか、その背景にある「ナフサ」の正体と今後の影響について解説します。
値上げの連鎖を引き起こす「ナフサ」とは?
ナフサとは、ガソリンに似た透明な液体で、石油製品のひとつです。原油を製油所の「常圧蒸留装置」で約30~180℃の沸点範囲で熱し、蒸留・分離して作られます。主にプラスチック、合成繊維、合成ゴム、包装材料、家電製品、自動車部品などの石油化学製品の原材料として使われます。
ホルムズ海峡の封鎖懸念により、日本が輸入の多くを依存している中東からの原油・ナフサ供給が滞っていることが、値上げの要因です。
先週、中東における紛争終結に向けた協議が難航したことなどから、原油価格は依然として高値水準で推移しています。ホルムズ海峡の封鎖懸念が続いているだけに、今後も値上げリスクが経済に悪影響を与える可能性がありそうです。
住宅設備や建材メーカーへの影響が拡大
先週、住宅設備機器メーカーのTOTO(5332)は、システムバスやユニットバスなどの製品の新規受注を停止することを関係業者に通知しました。壁や天井などに使われるフィルム接着剤やコーティング剤に含まれる有機溶剤の原料であるナフサの調達が、中東情勢によって不安定になっている影響だと説明しています。その後、TOTOは4月20日からユニットバスの新規受注を段階的に再開すると発表しています。
タカラスタンダード(7981)も一部商品で納期・数量・価格などに影響が出る可能性を公表。LIXIL(5938)も価格や納期、数量などの供給条件を調整する方針を示しました。住宅設備機器メーカーのこうした動きは、今後、住宅の建設やリフォームなどにも波及することが予想されます。
壁紙商社のサンゲツ(8130)は、7月の受注分から壁装材や床材などを値上げすると発表しました。中東情勢の緊迫化で、主要製品の原料である原油やナフサをはじめとする石油化学原料の価格が大幅に上昇したことを要因としています。
また、信越化学(4063)は、基礎化学品エチレンからつくる樹脂などの一部値上げを公表しました。対象は酢酸ビニールモノマーとポリビニールアルコールです。木工用ボンド、水性塗料、包装フィルムなどに使用されるため、食品や日用品を包装するフィルム、容器などの材料コストの上昇に繋がる見通しです。
日本ペイント(4612)も、3月に塗料の希釈剤として使われるシンナー製品全般について値上げする事を発表しました。シンナーはナフサから作られる基礎化学品を原料としており、工業分野で金属や樹脂、ガラスなどの表面に付着した油分を取り除く脱脂洗浄用途などに使われます。
その他の企業でも、続々と値上げを公表する動きが見られます。