はじめに

クレジットカードなどのタッチ決済で電車やバスに乗れる「タッチ決済乗車」が広まりつつあります。これまで電車やバスに乗るときには、交通系電子マネーを利用していた方も多いでしょう。今後は、お手持ちのクレジットカードなどでも簡単に電車やバスに乗れるようになっていきます。

では、電車やバスに乗るとき、クレジットカードなどのタッチ決済乗車を利用するのと、クレジットカードで交通系電子マネーへ「チャージ」するのとで、どっちが得なのでしょうか。


首都圏でもスタート!タッチ決済乗車サービス

タッチ決済乗車は、タッチ決済に対応したクレジットカード・デビットカード・プリペイドカードや、カードが設定されたスマホを端末にタッチするだけで電車やバスに乗れるサービスです。カードの国際ブランドによって名前が少々異なりますが、「Visaのタッチ決済」「Mastercardコンタクトレス」「JCBのタッチ決済」「アメリカン・エキスプレスのタッチ決済(コンタクトレス決済)」などに対応しているカードであればどの国際ブランドでも利用できます。

先行したのは関西圏。2024年10月29日より、関西の主要私鉄・地下鉄4社がタッチ決済乗車をスタートしました。本稿執筆時点(2026年4月20日)で、以下の路線でタッチ決済乗車をすることができます。対象路線間の乗り換え(相互利用)にも対応しています。

<タッチ決済乗車対象路線(関西圏)>
・WILLER TRAINS(京都丹後鉄道)
・Osaka Metro(大阪市高速電気鉄道)
・大阪モノレール
・北大阪急行電鉄
・近畿日本鉄道
・神戸市交通局(神戸市営地下鉄)
・神戸新交通(ポートライナー、六甲ライナー)
・神戸電鉄
・山陽電車
・南海電鉄
・能勢電鉄
・阪急電鉄
・阪神電車

導入の背景には2025年の大阪・関西万博がありました。外国人観光客にも電車に乗ってもらいたいものの、わざわざ交通系電子マネーを購入して円建てでチャージする手間は大きなハードルです。

すでに手元にあるクレジットカードでそのまま乗車できれば利便性が高まるため、タッチ決済乗車の導入が進みました。

2026年3月25日からは、首都圏の私鉄でもタッチ決済乗車がスタートしました。対象となる路線は以下のとおりです。関西同様、関東でも相互利用が可能。対象路線同士であれば乗り換えもできます。

<タッチ決済乗車対象路線(首都圏)>
・小田急電鉄
・小田急箱根
・京王電鉄
・京浜急行電鉄
・相模鉄道
・西武鉄道
・東急電鉄
・東京地下鉄(東京メトロ)
・東京都交通局(都営地下鉄)
・東武鉄道
・横浜高速鉄道

このほか、全国各地の電車・バスなどの路線でタッチ決済乗車を利用できます。

タッチ決済乗車のメリットは?

タッチ決済乗車のメリットには、次のようなものが挙げられます。

事前のチャージや登録が必要ない

交通系電子マネーは、事前に購入してチャージしておく必要があります。残高不足であれば改札を通ることができません。その点、クレジットカードやデビットカードでのタッチ決済乗車であれば、手持ちのカードやスマホがそのまま使えるので、準備が必要ありません。クレジットカードであれば料金は後払いですし、デビットカードであれば紐づけられた口座から即座に利用料金が引き落とされます。

SuicaやPASMOといった交通系電子マネーでも、所定のクレジットカードと紐づけることでオートチャージができますが、クレジットカードの種類が限られていますので、オートチャージを利用したいならそのクレジットカードを作らなければなりません。

ポイントが貯まる

タッチ決済乗車では、利用したカードのポイントが貯められます。楽天カードを使えば楽天ポイント、PayPayカードを使えばPayPayポイント、イオンカードを使えばWAON POINTが貯まるという具合です。

還元率の上乗せやキャンペーンなどが実施されることもあります。本稿執筆時点(2026年4月20日時点)では、三井住友カードの「スマホのタッチ決済乗車で最大8%」が目を引きます。全国の鉄道・バスでスマホのタッチ決済乗車をすると200円(税込)につき7%、Oliveフレキシブルペイのクレジットモードでの支払いなら8%のVポイント還元が得られます(上限月1000ポイント)。このほか、期間限定のキャンペーンが行われ、ポイント還元率が一時的にアップすることもあります。うまく活用できれば普段の乗車もお得にできます。

交通系電子マネーでも、チャージによってポイントを貯めることができます。たとえばSuicaでは、クレジットカードの「ビューカード」からオートチャージでSuica・モバイルSuicaにチャージした場合、1000円ごとに15ポイント貯めることができますので、還元率は1.5%。手動でチャージした場合も、モバイルSuicaなら還元率は1.5%です(カードタイプのSuicaへの手動チャージは0.5%)。

加えて、JRE POINT WEBサイトに登録したSuicaの残高でJR東日本の路線に乗車すると、モバイルSuicaなら50円ごとに1ポイント(還元率2%)、カードタイプのSuicaなら200円ごとに1ポイント(還元率0.5%)もらえます。つまり、Suicaの場合チャージと乗車でポイントの「二重取り」が可能です。ICOCAやPASMOでも、それぞれポイントが貯められるサービスがあります。

貯めたポイントはSuica・ICOCA・PASMOにチャージすることで残高として使えます。しかし、SuicaならJR東日本、ICOCAならばJR西日本、PASMOなら登録した路線の乗車でしかポイントが貯められません。

タッチ決済乗車のデメリットは?

タッチ決済乗車は便利なのですが、デメリットもあります。

対象路線外の乗り換えには対応していない

相互利用可能な鉄道会社のリストを見て気づいた方もいるかもしれませんが、関西圏であればJR西日本、首都圏であればJR東日本はタッチ決済乗車に対応していません。また、首都圏の場合、京成電鉄も対応していません。

タッチ決済乗車で改札をくぐり、タッチ決済乗車非対応の駅まで乗り越すことはできません。そのため、各鉄道会社では、乗り換える駅でいったん改札から出て、交通系電子マネーなどで再度入場してから乗り換えるように案内しています。

また、対象路線であってもタッチ決済乗車に対応していない駅もあるようです。この場合も精算ができません。こうした対応・非対応の不便を考える必要がないという点では、交通系電子マネーのほうが一枚上手といえます。

運賃が10円単位

交通系電子マネーで電車に乗ったときの運賃は1円単位で設定されていますが、タッチ決済乗車の運賃は切符の運賃と同じく10円単位になっています。極端にいえば、交通系電子マネーならば201円の区間でも、タッチ決済乗車ならば210円になるということが起こり得ます。

1回の金額の差としては少額かもしれませんが、回数を重ねればその差はだんだん大きくなります。「1ポイントもらえるから」という理由でタッチ決済乗車に切り替えたものの、トータルで考えれば交通系電子マネーのほうがお得だったということもあるかもしれません。

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