はじめに
2018年が始まって1週間が経ちますが、年末年始のニュースの中で、いろいろな商品・サービスの値上げのニュースが目に留まった方も多かったのではないでしょうか。しかも、中心的に取り上げられたのは、私たちの生活と密接に関係のあるものばかり。
今後さらに値上げの動きが拡大することになると、2018年は「値上げの年」になるかもしれません。こうした商品・サービスの値上げにはどのような背景があり、私たちの暮らしにはどのような影響を及ぼすことになるのでしょうか。
ゆうパック値上げが通販を直撃
すでに打ち出されている値上げの中で最も多くの人に影響が及びそうなのが、相次ぐ宅配便の値上げです。日本郵便は3月1日から「ゆうパック」の価格を平均で12%引き上げることを発表しています。
背景には、宅配便の配送を担当する人手が不足している現状があります。少子高齢化などによる労働力人口の減少や、Amazonをはじめとしたネット通販の拡大によって、2016年には遅配が大量に発生するなど、業界全体として人手不足が大きな問題となりました。
こうした状況を受けて、まず昨年10月にヤマト運輸が、次いで11月に佐川急便が、人員確保のために人件費を引き上げ、それに伴って宅配便価格を引き上げる、という流れになりました。
日本郵便では、各社の動向をながめながら様子を見てきましたが、他社からのシフトにより、昨年10月から12月にかけて前年同月と比べて2割程度の取扱量の増加となりました。こうして遅配のおそれが強まってきたことなどから、ゆうパックの値上げを決めました。
個人向けの値上げ幅は1~3割程度ですが、取扱量の9割を占める大口顧客向けは2倍以上の値上げを通告されているところもあるようです。そうなると、私たちがネット通販などで購入した商品の送料も値上げされる可能性が高いと考えられます。Amazonやメルカリなどを日常的に利用している人には、影響が直撃することになりそうです。
たばこにはもう一段の値上げ余地
値上げの動きは宅配便だけではありません。自民党が昨年12月に公表した2018年度の税制改正大綱では、大企業向けの減税とともに、高所得者向けの増税やたばこ税の引き上げが盛り込まれました。
このうち、たばこ税は8年ぶりの引き上げです。紙巻きたばこが10月から4年かけて1本当たり3円の値上げとなり、現在440円のたばこは500円に上がることになります。最近人気の高い加熱式たばこの税率も、紙巻きたばこの7~9割まで、5年をかけて段階的に引き上げる方針が示されました。
たばこには常習性があるため、価格が上昇したからといって喫煙の習慣をやめる人は多くないといわれています。また、喫煙率は高所得者よりも低所得者のほうが高くなっており、たばこ税の増税は高所得者よりも低所得者の財布に厳しいものといえそうです。
1人当たりのGDPなど国民の所得水準と比べると、日本のたばこ価格は主要先進国の中では決して高くないともいわれています。米国の各州平均と比べて2分の1程度の価格にとどまっているという分析もあります。もしかすると、数年後にさらなるたばこ税の増税、ということになるかもしれません。
食関連でも値上げが相次ぐ
ゆうパックやたばこ以外にも、今年は小麦粉やビール、外食産業などで、近日中の値上げが予定されています。小麦粉はすでに1~3%の値上げが実施されています。背景には、原料となる輸入小麦の世界的な高騰があるようです。
ビールについては、3月から4月にかけて各社とも、樽や瓶で販売する業務用商品で10%前後の値上げを予定しています。
全体の消費量が減少している一方で、物流コスト高騰などによる樽や瓶の回収コストの上昇を吸収するためです。缶ビールの店頭価格は去年からすでに上昇しており、今回の業務用の値上げで飲食店のビールも値上げされることになりそうです。
飲食店のメニューでも、鳥貴族が全品280円均一を298円均一へ、すき家は牛丼大盛を470円から480円に、天丼のてんやが天丼を500円から540円に値上げすることを発表しています。
中国での需要拡大などを背景とした業務用のコメや輸入牛肉の価格上昇が、その背景にあるといわれています。こうした状況は業界全体で共通のものと考えられますので、他社も追随して値上げする可能性があります。