はじめに

値上げの動きはさらに広がる?

こうした値上げの動きは、企業収益の改善を通じて、ゆくゆくは雇用環境の改善や賃金水準の上昇など、私たちの生活の潤いにつながっていくものと捉えられます。もっとも、こうした好循環につながるまでには、一般的に一定のタイムラグが必要になると考えられます。

そうなると、こうした値上げの影響は、ビールやたばこを好み、冷凍食品や小麦粉を使った料理を作り、牛丼チェーン店で昼食を食べ、仕事帰りに居酒屋に立ち寄り、Amazonやメルカリをよく利用するという生活をしている人には、当面の間、厳しい現実として現れてくることになります。

今後、人手不足やガソリン価格の上昇が強まるような場合には、より広範な品目に値上げの動きが広がる可能性があります。実際に、ワインやアイス、冷凍食品なども一部で原料や輸送費の高騰などによって値上げする動きが見られています。

このような値上げの広範化は、住宅ローンなどの金利の上昇につながるかもしれません。

値上げ広範化と住宅ローンの関係


値上げの範囲が広範になれば、日本銀行が金融政策を転換させる可能性もある

現在、日本銀行による金融政策は、ゼロ金利、マイナス金利という歴史的に類を見ない大規模な緩和が続いています。これは、長期間続いてきたデフレ状況からの脱却、2%程度の健全な物価上昇の実現という安倍晋三政権の至上命題に沿って、2013年初から日銀が取り組んでいるものです。

これまでの5年間は、大規模な緩和にもかかわらずなかなか成果が上がらず、現在の物価上昇率もゼロ%台後半で推移しています。ですが今後、この物価上昇率が2%を超えて上昇していくようだと、健全な物価上昇を超えた過熱状態にあるとして、日銀の金融政策が引き締めに転じて、金利水準が上昇する可能性があります。

今のところ、短期間で金融政策が転換される事態は考えにくいです。とはいえ、人手不足や、輸入原料・ガソリン価格の高騰などは構造的な要因も背景にあるとみられ、すぐに解消したり逆方向に転じたりするものではないとも考えられます。そうなると、広範な品目に値上げの動きが波及するには、それほど時間がかからないかもしれません。

2018年は、賃金の上昇に淡い期待を持ちつつも、値上がりによる生活費の高騰や将来的な住宅ローン金利の上昇の可能性まで見越して、中長期的な対策を考える。そんな年になるかもしれません。

(冒頭写真:ロイター/アフロ)

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