はじめに
親から相続した株や投資信託をどうしたらよいのか分からず、そのままになっているというご相談は少なくありません。今回は、運用者が亡くなった際の基本的な流れと、相続人が知っておきたいポイントについて整理してみましょう。
親の口座は金融機関が「死亡」を知った時点で凍結される
亡くなった父から相続した投資信託がそのままになっているのですが、どうしたらよいでしょうか? そんなご相談は少なくありません。預貯金と違い、株や投資信託は価格が変動する金融商品です。運用者が亡くなったあと、何をどのように手続きをすればよいのか分かりにくく、不安に感じる人も多いでしょう。
一方で、長年運用をしてきた株や投資信託は、インフレにも対応できる大切な資産です。しかし、受け取る側に知識がなければ、せっかくの資産が「もらって困るもの」になってしまうこともあります。
親から受け継いだ大切な資産を将来に繋げるためにどうしたらよいのか、まずは運用していた親が亡くなった時の基本的な流れをおさえていきましょう。
まず、亡くなった方が証券会社で株や投資信託を保有していた場合、証券会社は死亡の事実を知った時点で口座を凍結します。これは不正な取引を防ぐためです。
一般的な流れとしては、相続人が証券会社へ連絡し、必要書類を提出します。戸籍謄本や遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書などが求められるケースが多く、預金の相続と同様、一定の手間がかかります。
凍結されていた口座は、必要な手続きを経て相続人に引き渡されます。ただし口座そのものを引き継ぐことはできず、亡くなった方の口座から、相続人自身の口座へ株や投資信託を移管する形になります。
例えば、父親が特定口座で投資信託を保有していた場合、その投資信託を母親や子どもの証券口座へ移す、という流れです。父親名義の投資信託を相続した方の名義に書き換えてそれぞれの口座に移すと思えば分かりやすいでしょう。相続人が証券口座を持っていなければ、新たに開設する必要があります。
取得価格の引き継ぎと口座区分の選び方
ここで特に重要なのが、取得価格(取得単価)は亡くなった方が購入したときの価格をそのまま引き継ぐという点です。
例えば、亡くなった方が100万円で購入した投資信託が、死亡時には300万円になっていたとします。この投資信託を相続人が受け取ると、取得価格は100万円として引き継がれます。その後、相続人が320万円で売却した場合、利益は220万円として課税対象になります。
この取得費ですが、亡くなった方が相当前に取引をしていて当時の記録が分からないという場合もあります。その際は、売却した際の価格の5%を取得価格とする「概算取得費」が適用されてしまうので注意が必要です。
相続人が「投資信託そのものではなく現金で受け取りたい」と希望する場合は、遺産分割協議の中で換価(現金化)して分けることも可能です。ただし、証券会社が死亡の事実を把握すると口座は凍結されるため、通常の売買はできません。相続手続き完了後に代表相続人の口座へ移管し、代表相続人が売却したうえで、その代金を相続割合に応じて分配する方法が一般的です。売却による譲渡所得は代表相続人に帰属します。税務上の譲渡所得は、誰が実際に売却して所得を得たかで決まります。そのため、代表相続人の口座で売却した場合、譲渡所得は代表相続人に帰属します。一方で、売却代金の分配や税負担の最終的な調整は、相続人同士の話し合いで決めることができます。
また、相続人が複数いる場合は、投資信託の口数を相続割合に応じて分けるケースもあります。一方で、「一人が投資信託を相続し、他の相続人は預金を多めに受け取る」「投資信託を売却して現金で分ける」といった方法が取られることもあります。