はじめに
2027年1月、NISAのつみたて投資枠で債券ファンドが買えるようになります。一見地味な改正ですが、実は、何十年もの超長期運用を前提とする“あるプロ集団”の配分を、NISAの中で再現できる時代の到来を意味しています。
“あるプロ集団”とはGPIF。聞きなじみがないかもしれませんが、私たちの公的年金を運用している世界最大級の機関投資家です。年金って、受け取ったら使うお金ですよね? これは、私たちのNISAとまったく同じ。だからこそ、GPIFの運用方針は私たちにとって参考になるのです。
「オルカン一本で本当にいいのか?」—値動きが激しい局面で、夜も眠れなくなる。そんなモヤモヤを抱える人にとって、GPIFと同じ配分をNISAで再現する—これが、ひとつの答えになるかもしれません。
2027年、つみたて枠で“債券解禁”—改正の要点だけ押さえておこう
2026年3月31日に成立した令和8年度税制改正に基づき、NISAは2027年1月1日からの施行が予定されています(今後の政省令等で細部が変更される可能性があります)。改正ポイントは大きく3つです。
1つ目は、こどもNISAの新設。ジュニアNISA廃止後の空白を埋める形で未成年者向けのNISAがはじまります。
2つ目は、対象となる国内株式指数の拡充。読売株価指数(読売333)、JPXプライム150指数などが新たに追加されることとなり、従来のTOPIX、日経平均などに加え選択肢が広がります。
3つ目は債券ファンドの解禁。これまで「成長投資枠」でしか購入できなかった債券ファンドが、「つみたて投資枠」でも購入ができるようになります。
この“債券解禁”により、つみたて枠だけで国内株・外国株・国内債・外国債の4資産を、個別のインデックスファンドで組み合わせられるようになり、資産運用の自由度が大幅に向上します。
ではなぜ、この4資産分散が個人投資家にとって意味があるのか。それを理解するために、まずは冒頭で触れたGPIFについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
GPIFとは?—エリートが守り殖やす「将来使うためのお金」
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、運用残高約290兆円規模の世界最大級の機関投資家です。金融・経済のプロ集団が、私たちが受け取る年金の一部を用意するため、目標リターンを達成しながら、リスクをできる限り抑える運用を実践しています。
過度なリターンを追わず、かといって過度にリスクを恐れない。長期的に見て、ちょうど良くお金を殖やしていく—これがGPIFの運用方針の本質です。
長期的に見て、ちょうど良いGPIFの運用目標とは「賃金上昇率+1.9%」としています。賃金上昇率と同じだけ運用できれば、インフレでお金の価値が目減りするのを防げる。それに+1.9%上乗せすることで、目減りを防ぎつつ、その先でしっかり殖やせる。“払える分は確保しつつ、ムリは絶対にしない”—絶妙なライン目標なのです。
そしてこの考え方は、私たちのNISAとまったく同じです。NISAで積み立てているのも、“将来、自分や家族が使うため”のお金。数十年後に必要な金額分だけちょうど良く殖えていればいい。それ以上のリターンを、余計なリスクを背負ってまで追いかける必要はないはずです。
なのに多くの方は、オルカンやS&P500だけを積み立てています。でもその中身は株式100%、債券は0%。将来使うお金という点で同じなのに、プロよりずっと重いリスクを負っている—ここに、違和感はないでしょうか?
NISA内でついに完成する“GPIFモデル”—でも「バランス型1本」じゃダメなの?
GPIFと同じ4資産配分が、NISA口座内で再現できる時代へ
では、その違和感をどう解くか。答えはシンプルです—GPIFと同じ運用方針を、自分のNISAで再現すれば良いのです。
GPIFの基本ポートフォリオは、国内株・外国株・国内債・外国債をそれぞれ25%ずつ保有します。これまで、この配分を個人投資家がNISA内で、個別のファンドを組み合わせて再現するのは不可能でした。つみたて枠に債券ファンドがなかったからです。
しかし今後は、年金運用のプロが採用している配分を、NISAの非課税枠1,800万円を丸ごと使って、そっくり再現できるようになります。
4本バラバラだから得られる「設計と出口の自由度」
ここで鋭い読者はこう思うはずです—「GPIFと同じ配分なら、すでに売られている4資産均等バランス型ファンドを1本買えばいいのでは?」。
もちろん、それも合理的な選択肢のひとつです。ただ、4本バラバラに持つこととは、得られる自由度に大きな違いがあります。それが設計と出口の自由度です。
・設計の自由度
バランス型ファンドは比率が一生固定です。一方、4本バラバラで保有すれば、ライフステージに応じて配分を微調整する柔軟性を手にできます。プロが設計したGPIFの配分にそのまま丸乗りすることを前提としつつ、必要に応じて調整できる余地がある点が大きく異なります。たとえば若年期は株式比率をやや高め、引退期に近づくにつれて徐々に債券比率を引き上げるといった調整も可能です。
・出口の自由度
バランス型は、株も債券も一律で売ることしかできません。4本バラバラなら、たとえば株が調整局面にあるときは、値動きが穏やかな債券の方から取り崩す—つまり売る順番を自分で選べるのです。これは、将来の取り崩し期にこそ効いてくる違いです。
・NISA完結の利便性
これまで、こうした自由な調整をやろうとすると、債券ファンドを特定口座(課税口座)で買う必要があり、管理が煩雑でした。今回の解禁で対象ファンドが出そろえば、一生涯のメンテナンスがすべてNISA口座内で完結します。これが、今回の解禁の最大の意義です。