はじめに

岸田文雄氏が会長を務める資産運用立国議員連盟が50歳以上を対象に追加拠出枠を設ける「キャッチアップ拠出」の提言案を提出したことが話題になっています。これは、50歳以降の資産形成をさらに拡大させようという仕組みですが、どのような活用方法があるのでしょうか?


50代から掛金を増額できる「キャッチアップ拠出」とは?

確定拠出年金のキャッチアップ拠出とは、若年期に掛金を充分に拠出することができなかった人に、後からまとまった資金を追加拠出できるようにしようという制度です。この仕組みの導入に関しては、今回の提言が行われるより前から、厚生労働省の社会保障審議会企業年金・個人年金部会でも議論されてきました。

実際米国では50歳以上を対象に追加拠出枠として年間120万円程度のキャッチアップ拠出が導入されていることもあり、今後の実現への期待も高まっています。

確定拠出年金には年間の拠出枠があります。現行制度では企業年金のない会社にお勤めの方であれば、iDeCoの月の掛金上限額は23,000円です。30歳からこの枠を使って資産形成を始めると60歳までに828万円もの資金を所得控除を受けながら運用できますが、50歳からiDeCoを始めた人は276万円しか運用ができません。

そこで、若年期に掛金を充分に拠出できなかった方へ、追加の拠出枠を設けて利用してもらおうというのがキャッチアップ拠出の考え方です。例えば、10年間で本来の枠である月23,000円に10万円の追加ができれば、投資資金は1,476万円にも上ります。

20代、30代、40代の所得が50代よりも少ないと仮定すると、確定拠出年金の税制優遇のひとつである「掛金が全額所得控除になる」という実質的な節税メリットを有効に活用するためには、若年期に掛金を拠出するより、所得の高い50代から掛金を拠出した方が節税のメリットが大きくなります。拠出枠は使わなかったからといって繰り越されることはありませんから、若年期の未使用枠に相当する部分を50代から使えるといった考え方は良いアイディアかも知れません。

確かに若いころから老後に備えているという方は多くはなく、「老後の準備は50代から」というのは納得感があるかも知れません。しかしキャッチアップ拠出が実現するしないに関わらず、資産形成は「時間を味方につけること」が大前提です。

先ほどの例で月23,000円を30歳から60歳まで積み立てると投資元本は828万円であるとお伝えしました。仮に4%で運用できると資産は約1,600万円まで膨らみます。一方同額を50歳から60歳まで4%で積み立てて運用をしても投資元本276万円が338万円程度までしか増えません。

今回の案は、50代からキャッチアップで追加拠出することで挽回しようというものです。しかし、投資において「時間を味方につける」醍醐味は、運用期間を10年から30年へ「3倍」に増やすだけで、資産額を338万円から1,600万円へと「5倍近く」まで成長させられることにあります。

確定拠出年金は、受取の際に課税されます。一括で受け取れば退職所得控除、分割であれば公的年金等控除を利用し、課税を抑えることができます。

例えばこの退職所得控除ですが、加入期間を勤続年数と読み替えて計算します。そのため、30年掛金を拠出した際の退職所得控除は、40万円×20年+70万円×10年となり1500万円まで非課税で受取ができます。

一方10年しか加入期間がなければ退職所得控除は40万円×10年となり400万円です。上記の例では、338万円の資金は全額非課税で受取可能ですが、キャッチアップが実現して掛金を増やせば当然に課税額が大きくなるでしょう。

2026年12月、iDeCoが大幅にパワーアップ

キャッチアップ拠出を待たずとも、2026年12月からは確定拠出年金の掛金上限額が大幅に引き上がります。そして、70歳までの加入も可能になります。この改正については、厚生労働省も「iDeCoがパワーアップする」と告知に力を入れています。

例えば、会社員の場合、現在掛金上限額は企業年金の有無などで複雑に区分されていますが、どんな方でも月62,000円と整理されます。ただし、企業型DCやDBなどの企業年金の会社掛金がある場合は、それらとiDeCoの掛金を合算した上限が62,000円です。

単純に企業年金のない会社にお勤めの方の場合、23,000円が62,000円になるのですから大幅な引き上げです。自営業者などは68,000円が72,000円になります。

条件が緩和され70歳までの加入がしやすくなる点も大きなポイントです。

これまでは、厚生年金に加入している方、国民年金の任意加入をしている方に限って65歳までの加入が可能でした。しかしこれだと、過去に年金保険料の未納がない自営業者や定年で完全リタイアした方などは、iDeCoの加入を継続することができませんでした。今回の改正においては、年金の被保険者であることという条件が外れ多くの方が希望すれば70歳までiDeCoを継続できるようになります。

ただし、継続加入が可能な方は、①iDeCo加入者、②iDeCo運用指図者、③企業年金から資金をiDeCoに移換する方のいずれかに該当する方です。すると、これまで60歳以降のiDeCo加入が認められていなかった自営業者や完全リタイアした方が、あらためてiDeCoに加入しようとしても上記条件に該当しないので、やはり加入が認められないことになります。そのため、令和11年11月末までについては、特例を設け上記条件に該当しない方のiDeCo加入を認めることになっています。

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