はじめに
政策テーマで見る五つの注目分野

では、個人投資家はどの分野に注目すればよいのでしょうか。五つの注目分野を挙げていきます。
1.AI・半導体・デジタルインフラ
AIは、もはや一部のIT企業だけのテーマではありません。生成AIの普及が進むほど、データセンター、半導体、電子部品、通信インフラ、電力、冷却設備、サイバーセキュリティなど、関連する産業は広がります。日本企業の中にも、半導体製造装置、検査装置、材料、電子部品、空調、電源、通信機器などで強みを持つ企業があります。
ただし、AI関連は人気テーマである分、株価が先に期待を織り込みやすい点には注意が必要です。「AI関連」という言葉だけで飛びつかず、受注残、設備投資、営業利益率、会社側の見通し、顧客企業の投資計画を確認したいところです。テーマは正しくても、株価が高すぎれば投資妙味は薄れます。
2.防衛・宇宙・サイバーセキュリティ
地政学リスクが高まる中で、安全保障は日本にとって避けて通れない課題になっています。防衛装備品、レーダー、通信、衛星、造船、航空、海洋監視、サイバー防衛などは、複数年で政策的な支援が続きやすい分野です。
政府資料でも、経済安全保障の観点から重要技術の管理強化、データセンターやクラウドの安全性確保、重要インフラ事業者のサイバーセキュリティ強化などが示されています。
この分野では、売上の中で防衛や安全保障関連がどの程度を占めているかが大切です。 防衛関連として紹介される銘柄でも、実際には防衛向けの売上比率が小さい場合があります。テーマ名ではなく、受注残、中期経営計画、利益率、設備投資の方向を確認する必要があります。
3.エネルギー・電力インフラ
AI、半導体、データセンター、工場の国内回帰、防衛産業の強化が進むと、欠かせないのが電力です。AIはデータ処理の技術に見えますが、実際には膨大な電力と冷却設備に支えられています。どれだけデータセンターを増やしても、電力供給が不安定であれば成長の制約になります。
そのため、電力会社だけでなく、重電、変圧器、送配電、電力工事、蓄電池、パワー半導体、原子力関連、再生可能エネルギーの制御技術などにも資金が向かいやすくなります。半導体株が高値圏で買いにくい局面でも、その周辺にある電力インフラや設備関連に資金が回る可能性があります。
4.防災・減災・国土強靱化
日本は地震、台風、豪雨、猛暑など自然災害の多い国です。加えて、道路、橋梁、上下水道、港湾などのインフラ老朽化も進んでいます。骨太方針でも、激甚化・頻発化する自然災害やインフラ老朽化に対応するため、国土強靱化対策を進める方針が示されています。防災庁の設置や、ハード・ソフト両面の対策強化も盛り込まれています。
この分野は、短期の派手なテーマ株というより、公共投資の継続性が見込まれやすい分野です。建設、土木、建機、測量、気象、防災システム、インフラ点検、上下水道、港湾整備、物流インフラなどが関係します。配当や株主還元に積極的な企業であれば、長期保有の候補としても検討しやすい分野です。
5.地域経済・産業クラスター・物流インフラ
今回の骨太方針では、地域を単に支援対象にとどめず、「強い地域経済」をつくる方向が打ち出されています。地方に工場、データセンター、産業拠点を誘致し、港湾や物流網を整備し、地域ごとの産業クラスターを育てる流れです。政府資料では、「地域未来戦略」に基づき、産業クラスター形成、インフラ整備、地域未来交付金の拡充、地域企業の設備投資支援などを進めるとしています。
この分野では、地方銀行、地場建設、物流、倉庫、港湾、不動産、産業団地、地域DX、観光、食品関連などが関係します。ただし、地方創生という言葉は範囲が広いため、実際に案件を持っているのか、自治体や大企業との連携があるのか、収益化までの道筋があるのかを見極めたいところです。