はじめに
なぜ「親のセカンドハウス」は、家族にとって厄介なのか

ここまでみてきたパターンはすべて、親の情熱や購入当時の社会常識・流行等を踏まえた視点と、子世代における現代の社会常識の視点との間で、不動産に対する捉え方のギャップが非常に大きいことに起因しています。ここから生まれる厄介な問題があり、それは「感情面と実務面の両方で、家族で衝突する恐れがある」ことです。
まず感情面では、親にとっては「良かれと思って購入した資産が、まさか子どもを苦しめる負債になるかもしれない」という申し訳なさが生まれ、子どもにとっては「親の不動産に対する自分の捉え方は、ともすると親の人生の一部を否定するような、抱いてはいけない感覚なのではないか」というジレンマに陥る可能性があります。そのため、当事者同士でこういった不動産に対して、センシティブな話題の対象という感覚になり、今後の管理や相続等による引き継ぎのために方針を話し合う機会を逸してしまいやすいのです。
さらに、誰かが勇気を出して話し合いのきっかけを作ったとしても、お互いの負い目から、建設的な議論に繋がらなかったり、親子の関係性や性格によっては、各々の持っている価値観や本音といった感情が先行してしまったりして、話し合いがうまく進まないことも起こりえます。例えば親の立場からは「将来の家族の思い出作りや、家族の幸せのために資産形成してきたんだし、相応の価値は今でもあるはずだから、むしろ感謝して貰わないと心外だ」という主張と、子の立場からは「子どもとして不要と思っているのは事実だから、自分の意思で決めた買い物の処分は、自己責任でやってくれ」という反発がぶつかり、攻撃的な対立に発展してしまうなど、話が平行線になってしまう可能性もあります。
次に、実務面でも特殊な問題を抱えます。概念的には、使っていない不動産なのであれば、売却処分をしてしまえば、そもそもこのような悩みに巻き込まれることはありません。しかし、時代の変遷とともに、不動産市場において趣味用途の不動産の需要は非常に限定的で、「売ろうとしても一向に売れない」という壁に直面し、売却処分という選択肢が断たれた中で方針協議をする必要に迫られることが圧倒的に多いのです。
例えばリゾートマンションは、管理組合の修繕積立金不足が慢性化し、管理費等の値上げや、所有者全員が高額な一時金を負担する形での建物解体を検討すべき等の危機が訪れます。そのため、少しでも早期の売却処分など、何らかの一歩を踏み出すことが最善策といえるでしょう。しかし、そのような危機の迫った不動産を好んで探す買い手は僅少であり、容易に売却もできないため、「最善策が断たれた中での妥協案」を何らか模索するような議論にならざるをえません。このことから、高額で流通し需要も旺盛な都市部の不動産とは異なり、家族内での話し合いの難易度も非常に高く、家族全員が疲弊してしまいます。
現実的な選択肢
このような環境下でも、やはり課題解決に向けた現実的な話し合いをなくして、家族内での意識のギャップや軋轢などを解消することはできません。その意味で、たとえ茨の道であったとしても、家族での話し合いは避けては通れないものといえます。
先に述べたように、現在は社会のニーズの変化等により、買い手を探すのは決して容易ではありません。しかし、容易でないとはいえ、売却不可能ということでもありません。昨今では、そういった資産価値の低くなった不動産を個人間で取引できるマッチングサイトの活用や、どうしても早急かつ確実に処分したい人向けに、専門業者がそういった不動産を引き取ってくれるサービス、相続土地に限っては、国が有料で引き取ってくれる「相続土地国庫帰属制度」など、考えられる売却処分の選択肢は複数あります。
こういった選択肢の想定もない中での議論は、暗中模索の議論のようになりかねません。ある程度明確なイメージを持てる選択肢とともに議論ができれば、話し合いの難易度や着地点は大きく変わることでしょう。
そして、家族での話し合いにあたっては、所有者本人である親をはじめとして、全員が元気なうちに話すことが重要なポイントとなります。多額の修繕費が強いられる状況に直面したような心に余裕を持てないタイミングや、家族が認知症になって話し合いができないタイミング等では、円満な解決策を導けないリスクもあります。例えば、親の体力的に趣味継続が難しくなったり、管理費値上げの通知が来たりした節目を狙って、お互いの置かれた状況やこれまでの経緯など、感情を尊重しつつ負担軽減につながるような話し合いを心がけることで、建設的な議論に繋がりやすくなります。
親の「夢のセカンドハウス」は、人生のハイライトです。だからこそ思い入れを尊重しつつ負担をなくす解決を目指して、家族の思い出を振り返りながら話し合いを始めることが強く推奨されます。この一歩が、家族の笑顔と家計を守ることに繋がるでしょう。
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