はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

3年ほど前から会社員の傍ら、不動産投資をしています。毎年なんとか順調に利益が出て、納税も行ってきました。そろそろ“魔の確定申告”の時期が近づきつつあります。不慣れなため、いつも作業に相当な時間を取られてしまいます。確定申告を最短で効率的にこなすスキル等ありましたら、教えていただきたく思っています。
(40代前半 既婚・子供2人 男性)


野瀬: 確定申告シーズンですね。私もこの時期は確定申告関連のセミナーをたくさん行うので、さまざまな質問をお受けします。

確定申告は税理士に頼むべき?

そのなかでも、よく受けるのが「自分でやるべきか、税理士にやってもらうべきか」という質問です。

私自身も不動産投資をしており、その経験から「不動産投資を含む個人の投資レベルであれば、税理士にお願いせずとも自分自身でやったほうがコストがかからずお得です」と答えています。

個人の確定申告書作成の場合、税理士への報酬の相場は2万円~3万円程度です。

ただ、個人の投資の確定申告作業はさほど難しくありません。株式投資やFXはもちろん、不動産投資も在庫のいらないシンプルなビジネスですから関連書籍などで学んで対応することも十分可能です。

いわゆる事業規模(≒5棟or10室以上)と判断されるぐらいの不動産投資や、不動産の売却が生じた年については税理士さんにお願いするほうが無難かとは思いますが、そうでなければ個人で対応したほうが基本的に費用対効果がよいです。

確定申告3つのステップ

不動産投資の確定申告は非常にシンプルであり、難しくはありません。行う作業は基本的に3つです。

1:家賃収入の確定

家賃の滞納がない限り、銀行への入金記録から簡単に追えるでしょう。クラウド会計ソフトを利用されてもよいですし、単純に「毎月の家賃収入×12」で集計できます。

2:経費の確定

不動産投資における経費のほとんどは管理費と修繕積立金だと思います。

こちらについても通常口座からの引き落としであることが多いので、クラウド会計ソフトで簡単に集計は終わります。

手作業で行う場合は、家賃収入と異なり月によって異なるケースがありますので12か月分を電卓で集計されるとよいでしょう。

また、それ以外の経費(固定資産税や保険料)が掛かったケースも集計を忘れないようにしてください。不動産投資の場合、これらの経費はあっても年数回だと思いますので、それほど時間はかかりません。

不動産投資では、通常のビジネスと違って経費の分類が少ないので、領収書や請求書を「固定資産税」「保険料」「その他」と確定申告の区分にあわせてクリアファイルを用意し、ざっくり分けておくだけでよいと思います。

3:減価償却費

不動産投資の確定申告で面倒になるのはこの減価償却費です。会計知識がない方の場合、この減価償却費を理解するのがなかなか難しいからです。

ただ昨今は国税庁のHPも便利になっており、条件さえ入力すれば自動で計算できるようなっています。会計ソフトでも初期設定をすれば自動で計算できます。

昨年、不動産投資の物件数に変化がなかったのであれば、減価償却費は基本的に去年と同じです。国税庁のHPでも、全体の計算が終わっているのであれば、わざわざ物件ごとの情報を記入しなくてもトータルの金額を入力するだけで確定申告書ができるようになっています。

確定申告の裏ワザ!?

あと、これは少し裏ワザですが、青色申告の損益計算書、もしくは白色申告の収支内訳書まで作っている場合、あとはそれを打ち出して所管の税務署の無料相談会(2~3月頭に開催される)に持っていくと、その場で確定申告までしてもらえます。

つまり、不動産投資の場合、家賃の集計・経費の集計・減価償却費の集計を行い、源泉徴収票や医療費控除の証明となる領収書などの必要書類を持参した上で、「申告書の作成が難しい」とお願いすれば、文字通り“最速”で作成・申告が終わります。

ただ、もちろん税務署のスタッフの方は2月から3月は非常に忙しいので、これは“非常時の手段”としてくださいね。

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