はじめに

預かった消費税は「預かりもの」。事業用資金と分けて管理しよう

制度の細かい話以上に、キャッシュフローにとって大事なことがあります。2割から3割、そして将来の本則課税・簡易課税へと、消費税の負担は段階的に増えていくということです。

2割特例のあいだは負担が軽かった分「消費税を納めている」という感覚が薄かったかもしれません。でも、預かった消費税はそもそも「売り上げではなく、預かりもの」。今後はこのマインドチェンジが大切です。

これは私自身、経営者・個人事業主として痛感していることでもあります。駆け出し経営者だった10年前、顧問税理士からこう言われました。「所得税や法人税は、資金繰りの都合でどうしても納税期日に間に合わないとき、税務署に相談すれば事情を酌んでもらえることもある。でも消費税は“預かっているお金”だから、それは通りにくい」と。

実際には消費税にも猶予の制度はありますが、その性質上、シビアに見られやすいです。だからこそ預かった消費税は、最初から事業のキャッシュフローのお金とは分けて管理することが、結果的にキャッシュフローを良くします。

具体的には、売上が入った時点で、消費税分を事業用口座とは別の「納税専用口座」などで先取りしておくこと。3割特例なら、税込売上のおよそ2.7%(=10/110×30%)が将来の納税額の目安です。毎月分けておけば、申告期に資金繰りで慌てることはありません。

なお、取引先が課税事業者の場合、価格や取引条件の見直しを求められる可能性があります。免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除の経過措置も改正されているため、最新の国税庁情報も確認しておきたいところです。

法人は「3割特例」無し。法人化を考える前に知っておきたいこと

ここまでは個人事業主の話でした。では、「インボイス登録を機に法人化したほうが得なのか」という点はどう考えればよいのでしょうか。

まず押さえておきたいのは、3割特例は個人事業者だけの措置であり、法人は対象外だということです。つまり、個人なら2027年・2028年の2年間は3割特例という緩衝材がありますが、法人にはそれがありません。

そのため、売上規模が同じでも、個人であれば当面は3割特例で負担を抑えられる一方、法人化すると本則課税か簡易課税での対応を前提に考えることになります。

したがって、「インボイス対応のために法人化したほうが得」と単純に考えるのは早計です。法人化を検討する場合は、社会保険や所得分散だけでなく、個人なら使える3割特例を手放すことになる点も含めて慎重に判断したいところです。

今からの3ステップ:あわてず、でも準備は始める

2割特例の終了は負担増の入り口ですが、個人事業者には2027〜2028年の3割特例という猶予があります。だからこそ、必要なのは「あわてて動くこと」ではなく「順番に確認しておくこと」です。最後に、この夏のうちにやっておきたい3つを整理します。


①自分の業種を確かめる……簡易課税の納税率(卸売10%〜不動産60%)と3割特例の30%を比べ、自分はどちらが得かを判断しましょう。

②切り替える可能性がある人は、簡易課税制度選択届出書の提出期限を確認しておく……簡易課税には2年縛りがあるため、切り替えるなら提出時期を慎重に確認しておきましょう。

③納税資金を先に分けておく……負担は段階的に増えます。預かった消費税はあくまで“預かりもの”。売上が入金された時点で別口座によけておけば、申告期に困りません。


制度は今後も変わっていきますが、やることはシンプルです。期限に追われる前に、自分の数字を一度確認しておく——それだけで、損もぐっと減らせます。

税金を払いすぎていませんか? 自分に最適な節税をお金のプロに無料相談[by MoneyForward HOME]

この記事の感想を教えてください。