はじめに
1日に数千円単位で上下するなど、かつてないほどの乱高下を繰り返している日経平均株価。米国のハイテク企業の動きに振り回される中、投資家にとっても相場の方向感が見えにくく、判断が難しい局面が続いています。
マネーフォワード MEのYouTubeチャンネル「ME STUDIO」で配信されている「大川 & Nobbyの聴くだけ投資」では、クオンツアナリストの大川智宏氏とDJ Nobby氏が最新の相場動向を鋭く解説しています。
動画本編では、米国CPI(消費者物価指数)の無風通過と金利高止まりの真相から、サンディスクの強気見通しに潜む「メモリバブル」の警戒ポイント、メモリ価格下落が「任天堂」などゲーム株の追い風になる仕組み、さらには「SaaS is Dead(SaaSの死)」という警戒感が和らいで上昇した「弁護士ドットコム」などソフトウェア株の見直し買いのゆくえ、そして大川道場でジャッジする半導体サポート裏方企業「ミスミグループ本社」の評価まで、今後の相場を見極めるヒントを詳しく紐解きます。
無風のCPIとメモリバブルの正常化:予想通りで通過した米CPIの裏で、サンディスクの強気見通し(荒利率80%)に対し、大川氏は中国勢(CXMTなど)の増産やAppleの調達テストから「メモリ価格高騰の継続は楽観視できない」と慎重
任天堂などゲーム株への「メモリ安」の恩恵:「メモリバブル崩壊」はハイパースケーラーの調達コスト低下を意味し、長期的にはハードの普及を通じて「任天堂」や「カプコン」などゲーム株の利益率を押し上げる強力な追い風になる仕組みを解説
SaaS・ソフトウェア株の「急反発」とミスミの行方:弁護士ドットコムのストップ高が示すように、AI代替リスクによる「SaaSの死」という懸念は過剰。大川道場では、AI・半導体の裏方として上方修正を出した「ミスミグループ本社」のバリエーションとテクニカル面を分析
米CPIは予想通りの「無風」通過。金利高止まりでも底堅いメガバンク株の背景
注目されていた米国のCPI(消費者物価指数)が発表されました。結果は総合が前年比3.4%、コアが2.5%と、前月比・前年比のコアおよび総合の全指標が市場予想通りとなる非常に珍しい展開となり、市場は「無風」で通過しました。
大川氏は、「CPIの伸び穏化が予想通りに進んだことで、9月のFOMC(連邦公開市場委員会)での追加利上げ確率(フェドウォッチ)は、雇用統計前の55%から44%、さらに今回のCPIを経て40%付近まで低下した」と指摘。利上げ見通しの後退は、負債比率の大きいハイテク株にとっては本来プラス要因です。
しかし、米国の10年債金利は依然として高止まりしており、日本の10年債利回りも上昇を続けています。この金利上昇局面において、グローバルで大手の銀行株は底堅い動きを見せています。大川氏は「金利上昇トレンドが継続する限り、銀行の利ざや改善期待が続くため、ハイテク株の不調とは異なる独立した軸でメガバンク株は存在感を示し続ける」と分析しています。
サンディスク「荒利率80%維持」の罠?中国勢の台頭とAppleの動きに警戒
足元で半導体メモリ関連株が急速にリバウンドしています。きっかけは、サンディスク(SanDisk)がインベスターデイで「今後数年間にわたり、荒利率80%を維持する」という強気の事業計画を示し、株価が一時13%超も急騰したことです。通常、製造業の荒利率(マージン)は60〜70%程度であり、80%の維持は高い水準です。
しかし、大川氏はこの見通しに対して冷静な見方を示します。「サンディスクの前提は『メモリ価格の高騰が今後も維持・加速する』というものですが、これほど儲かる市場に競合が参入してこないはずがありません」。実際、中国のDRAM大手「CXMT」が上場し、調達資金で生産能力を2〜3倍に拡大する計画を発表しています。さらに、NAND大手の「YMTC」も中国版ナスダックへの上場を控えており、安価な中国製メモリの大量供給(供給過剰)のリスクが急速に高まっています。
さらに、Appleはすでに米国国外向け製品でのコスト削減のため、中国製メモリの調達テストを進めているとされ、ヒューレット・パッカード(HP)やエイサー(Acer)などの大手PCメーカーはすでに一部製品でのテストや採用を開始している実態があります。Appleのような世界的な巨大小売が安価な調達に成功すれば、高騰していた世界のメモリ価格は一気に崩れる可能性があります。大川氏は、足元の半導体株のリバウンドを「長期的な上昇の第2幕」と楽観視するのは危険であり、慎重な視点が必要だと警鐘を鳴らしています。
「メモリバブル崩壊」は悪ではない?任天堂など「ゲーム株」に追い風が吹くロジック
多くの投資家は「メモリ価格の下落=ハイテクショック」とネガティブに捉えがちですが、大川氏は「これは『AIバブルの崩壊』ではなく、単なる『メモリ価格の正常化(メモリバブルの正常化)』であり、市場全体にとってはむしろ好影響をもたらす」という独自の視点を提示します。
メモリの調達価格が下がれば、GoogleやAmazon、Microsoftなどのハイパースケーラー(巨大IT企業)にとっては、巨額だったデータセンター建設・運用の「コスト低下(利益率のブースト)」を意味します。国内でその恩恵をダイレクトに受けるのが、任天堂を筆頭とする「ゲーム関連株」です。
「これまでメモリ価格の高騰は、ゲームハードウェアの製造コストを強く圧迫してきました。しかしメモリ需給が緩めば、ハードウェアの製造コストが低下し、ハードが普及しやすくなります。ハードが売れれば、利益率の高いソフトウェアが大量に売れるという好循環(コストダウン効果)が生まれます」と大川氏。
任天堂では『ポケットモンスター』関連の最新タイトルが大人世代にも幅広く浸透しており、IP(知的財産)の強さが改めて証明されています。カプコン(モンスターハンターシリーズなど)やバンダイナムコといった大手のゲーム会社、さらには半導体の「お宝部品(パッケージ基盤)」が高利益を叩き出しているTOPPAN(旧:凸版印刷)など、これまで「半導体バブル」の陰に隠れて評価が遅れていた内需・優良株に、本格的な再評価の波が訪れていると言えそうです。