はじめに

見落としがちな退職翌年にかかるコスト

退職した翌年は、前年の所得に対して住民税の支払いが生じます。退職後、すぐに仕事に就かない場合、求職状態であれば失業給付を受け取れますが、一方で、国民年金保険料(17,920円×12=215,040円)と、前年の所得を基に計算した国民健康保険料・介護保険料の支払いが生じます。退職金からこれらの支払いに備えて、200万円程度を確保しておきましょう。

ここまでの老後の収支

<おもな支出>
・退職後15年間の生活費:156万円×15年=2,340万円
・ライフイベント資金:1,000万円
・リスク予備資金:1,000万円
・退職後のコスト:200万円
・支出合計 4,540万円

<おもな金融資産>
・貯蓄総額 5,000万円
・投資額  1,500万円(現在価値)
・退職金  1,700万円(予定)
・資産合計 8,200万円

現在の生活費、現在の物価で試算をすると、2年後に退職しても資産の範囲内で十分にやっていける見立てとなりました。

今後の運用方針はリスクを最小限に

退職後の支出が合計で4,540万円と試算できましたが、その多くはすぐに使うお金ではありません。実際に使うときまでは、引き続き運用できます。

ご相談者さんは、退職までにNISAの投資可能枠1,800万円を満額利用予定です。NISAには引き出し期限がなく、運用益が非課税のまま複利運用できますから、当面は使わずに放置しておきましょう。

NISA以外の資産としては、貯蓄5,000万円に、退職金1,700万円が加わる予定です。預貯金は退職後1〜2年で使う金額に留めて、残りは有効に運用しましょう。ただし、仕事を辞めた後の生活資金ですから、あまり大きなリスクは取りたくありません。利益を得るというよりも物価上昇による資産の目減りを補う目的で、2〜3%程度の運用益を目指します。例えば、半分を個人向け国債、半分を投資信託で運用するといった形にしてもいいでしょう。

「個人向け国債」は、発行後1年間は解約できない、満期前に中途換金すると直近1年間に受け取った利息相当額が差し引かれるといった注意点はあるものの、基本的に元本保障の金融商品で、一般的な定期預金よりも利率が高めに設定されています。例えば2026年7月募集分は「変動10年」が年1.80%、「固定5年」が年1.95%。預金に預けておくよりはメリットがあるでしょう。

資産以外に気を付けたい、時間との付き合い方

退職後のお金の目途はある程度経ちました。ここからは、会社を辞めた後のFIRE生活をイメージしていきましょう。

50代半ばで会社を辞めてFIREすると、急に時間が生まれます。人生100年時代と考えるとあと45年あるわけです。何をして過ごしましょうか。

「辞めた直後が一番若い」と考えると、旅行などやりたいことは、先送りせずにどんどんやっておきましょう。親が弱ってくると旅にも行きにくくなります。

その先は、新たな仕事でも趣味でも、心から楽しめて「いきがい」を持って取り組めることを見つけられるといいですね。そのなかで新たな友や仲間と「つながり」、助け合える関係を築きましょう。身体を動かしてバランスのいい食生活をすることは「健康」を維持するうえで重要です。

退職後、もしも孤独に引きこもって健康を損なうと、生活の質は低下し、医療費が余計にかかるので、それが一番もったいないことです。

「辞めても大丈夫」なお金の目途が立ったからこそ、辞めるまでの期間を、FIRE後の生活の準備期間に充ててください。「お金」「いきがい」「つながり」「健康」のバランスを意識して、豊かな暮らしを実現できますように。

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