はじめに
米金利高騰の背景:AIハイテク企業による巨額の社債発行ラッシュが米国債の需要を圧迫している構造を解説
OpenAI崩壊懸念の捉え方:一時的な急落ショックのリスクはあるものの、AI需要全体のパイは縮小しないため長期の好機
関西電力の値上げ:データセンター建設に伴う電力不足で料金改定。業績未織り込みから株価が急伸した背景を分析
1日に数千円単位で上下するなど、相変わらず乱高下を繰り返している日経平均株価。米国の金利動向やハイテク大手の不透明感に振り回され、個人投資家にとっても次の手を見極めにくい状況が続いています。
マネーフォワード MEのYouTubeチャンネル「ME STUDIO」で配信されている「大川 & Nobbyの聴くだけ投資」では、クオンツアナリストの大川智宏氏とDJ Nobby氏が、今週のマーケットの裏側を鋭く解説しています。
今回は、世界的に議論される「AIバブル崩壊論」の真相から、米国の金利高騰を招いている要因、データセンター向けの電力不足を背景に株価が急伸した「関西電力」などの国内インフラ株、美容器具大手「MTG」の投資見通しまで、今後の資産形成に役立つ情報を解説します。
米30年債利回りが19年ぶり高水準に。金利高騰を牽引するAI社債の存在
今週の市場では、日米ともに金利の高騰が大きな話題となりました。特に米国の30年債利回りが19年ぶりの高水準を記録したことで、投資家には警戒感が広がっています。この事態に対し、米国の有識者からは、超長期国債の買入れ枠を倍増させて金利の上昇を抑え込むべきだという牽制発言も飛び出しました。
しかし、大川氏は金利上昇が止まらない背景に、AI・ハイテク企業による「社債の大量発行(供給過多)」があると指摘します。
現在、先端半導体の調達やデータセンター建設のために、多くのAI関連企業が魅力的な金利を提示して社債を大量に発行しています。投資家の資金がハイテク社債に流れることで、相対的に米国国債の需要が下がり、国債が売られて金利が上昇するというスパイラルが起きているのです。
マクロ面では、インフレに伴う高金利政策の長期化が予想される中、ハイテク企業の資金調達コスト負担がさらに高まるリスクには注意が必要です。
OpenAIに不穏な噂?「AIクラッシュ懸念」は本当にリスクなのか
AI相場ですが、ここへきて主役である「OpenAI」に不穏な空気が漂っています。相次ぐ上級幹部の退職報道や、上場延期に伴う財務悪化の懸念が表面化しているためです。さらに、中国のアリババ系AIアプリ「Kimi(キミ)」が半年間でダウンロード数世界一を記録するなど、AIアプリ市場はすでに激しいシェア争い(レッドオーシャン)に突入しています。
大川氏は、AI業界の裏に潜む「循環取引(エコシステム)の脆弱性」を指摘します。エヌビディアが出資し、OpenAIがオラクルのデータセンターを使い、そのデータセンターを作るためにエヌビディアの半導体チップを購入するという、大手ハイテク間で資金をぐるぐる回す構造が成り立っています。このため、OpenAIなどの一角が仮に立ち行かなくなれば、循環が止まって業界全体に一気に一時的なクラッシュ(急落)が起きる不確実性があります。
ただし、大川氏は「これは業界の終わりを意味するものではない」と冷静です。仮に1社が脱落しても、AIの実需や全体のパイ(市場規模)自体は縮小せず、競合他社(アンソロピックなど)に需要が移動するだけだからです。一瞬の混乱で株価が急落する局面があれば、それは長期的な視点を持つ投資家にとって、AI・データセンター関連株を割安に拾う好機になり得ると分析しています。
データセンター需要がもたらす電力不足。「関西電力」11年ぶり値上げの裏側
前回の解説では、メモリ価格がどう動こうとも、データセンター投資が続く限り電線大手の「フジクラ」には実需が残り続けることを説明しました。今回はさらにその先、データセンターの稼働に欠かせない「電力」という周辺インフラに焦点が当たっています。
その代表例が、11年ぶりに企業向けの電気料金値上げ(10%〜15%)を発表した「関西電力」です。特に産業用電力を15%と大幅に引き上げていますが、これは今後稼働する大規模データセンターをターゲットにした値上げと言えます。関西エリアでは、KDDIやソフトバンク、東京建物、NTTなどが次々とデータセンターを建設・稼働させる計画があり、電力不足とそれによる電気代の上昇はほぼ確実視されています。
さらに株式市場を驚かせたのは、関西電力側が「今回の値上げによる増収分を、現時点の業績予想には一切反映させていない(未織り込み)」とはっきり明言したことです。これを受けて同社の株価は一気に10%近く急伸しました。
大川氏は「データセンターバブルを直接追いかけるのが難しくなってきた局面こそ、こうした電力やエネルギーといった周辺インフラの手堅い国内企業に目を向けるのが手堅い選択肢」と評価します。北海道電力や九州電力も含め、電力株は中長期で底堅いテーマとして注目されます。