はじめに
米財務省の長期国債買い戻し拡大

米財務省も8月19日、10~20年および20~30年の長期国債を対象とする流動性支援の買い戻しについて、1回あたりの上限を20億ドルから少なくとも40億ドルへ引き上げる方針を発表しました。発表後には30年債利回りが大きく低下しましたが、市場では、これは長期的な財政問題を解決するものではなく、国債市場の流動性を支える短期的な対策との見方もあります。
財政赤字をGDP比3%へ、「3%・3パート・ソリューション」
ダリオ氏は、この問題への処方箋として「3%・3パート・ソリューション」を提唱しています。具体的には、米国の財政赤字をGDP比3%程度まで引き下げるために、歳出削減、税収増加、金利低下、この3つを同時に進めるという考え方です。どれか一つだけに負担を集中させると経済へのショックが大きくなるため、3つを組み合わせる必要があるとしています。
米国リスクを重ねないための分散
では個人投資家は、これをどう考えればよいのでしょうか。重要なのは、米国が近いうちに破綻すると考えて株をすべて売ることではないでしょう。
債務問題は、ある日突然デフォルトという形で表れるとは限りません。その前に、金利、為替、金価格、国債需給などに変化が現れる可能性があります。そのため投資家としては「危機を予想する」のではなく、「債務問題が悪化しても資産形成を続けられるポートフォリオを作る」という発想の方が現実的です。
例えば、米国株、ドル、米国長期債を大量に保有している場合、一見すると株と債券で分散しているように見えます。しかし米国の財政やドルへの信認が問題になる局面では、すべてが同じ「米国リスク」に影響される可能性があります。
そのため、資産クラスだけではなく、国、通貨、金利感応度まで分散して考える必要があります。
株式・長期債・金・現金・Bitcoinの5つの考え方
そのうえで、私は次のように考えるのが現実的だと思います。
1つ目は、株式を大幅に減らす必要はないということです。債務問題が深刻化した場合でも、名目価格で見れば企業利益や株価がインフレとともに上昇する可能性があります。ただし、指数をそのまま持つだけではなく、フリーキャッシュフローが強い企業、価格転嫁力のある企業、財務負担が小さい企業、継続的に配当を増やせる企業を重視した方がよいでしょう。日本株では銀行、商社、資源、電力インフラなどを含め、AI・半導体だけに偏らないことも重要です。
2つ目は、長期債を「安全資産」と決めつけないことです。今回のダリオ氏の主張で、個人投資家にとって最も重要なのはここだと思います。長期国債は景気後退には強い一方、財政不安やインフレ期待の上昇には弱い資産です。債券を持つのであれば、現時点では満期の短い国債や短期金融商品を中心にし、長期債は慎重に扱う方が合理的です。
3つ目は、金を単なる値上がり狙いではなく「通貨分散」として持つことです。金価格が上昇したから買うという発想ではなく、円やドルなど法定通貨だけに資産を置くリスクへの保険と考えます。ダリオ氏が10〜15%程度を示唆する考え方には一定の合理性があります。ただし一括で増やすのではなく、例えば5%から始めて10%前後まで段階的に増やす方法でも十分です。
4つ目は、現金を軽視しないことです。インフレ局面では現金の実質価値は低下しますが、相場急落時に最も価値が高まるのは「買える資金」です。特に現在のように株価水準が高く、長期金利や地政学リスクも大きい局面では、現金比率をある程度残しておく意味があります。「機会損失を避けるために常にフルインベストメント」という発想より、下落時に動けることを優先した方がよいでしょう。
5つ目は、Bitcoinを金と同列には扱わないことです。法定通貨への不安が高まれば資金が入りやすいという意味では共通点がありますが、価格変動、規制、投機資金への依存度は金より大きいです。そのため保有する場合でも、ポートフォリオ全体の1〜3%程度から考える方が扱いやすいと思います。