はじめに
日米の株式市場では、注目されていた半導体大手の決算発表を通過したものの、個別銘柄の動きには利確売りが交錯するなど、方向感が見えにくい状況が続いています。
マネーフォワード MEのYouTubeチャンネル「ME STUDIO」で配信されている「大川 & Nobbyの聴くだけ投資」では、クオンツアナリストの大川智宏氏とDJ Nobby氏が、今週のマーケットの裏側を解説しています。
今回は、一時23%急騰したセールスフォースの決算から見えるソフトウェア株の動向や、エヌビディア決算の「顧客分散」という好材料、大川道場で取り上げる海運大手「商船三井」の投資判断、そしてお得なキャンペーン情報まで、今後の資産形成に役立つ着眼点を紹介します。
セールスフォース急騰とSaaS:決算後に株価が20%以上上昇。AI代替懸念は行き過ぎであり、ハードからソフトへの資金シフトの兆候を分析
エヌビディア顧客の広がり:好決算を示したエヌビディア。顧客構成で巨大IT企業への依存度が下がり、一般産業への裾野が広がる好材料を解説
商船三井の評価と配当リスク:大川道場では「商船三井」を分析。ボラティリティが大きく先行きが見えにくいため、配当目的の安易な購入には注意が必要と指摘
エヌビディア決算は「満額回答」。それでも反応が薄かった背景と顧客分散の好材料
今週最大の注目イベントであったエヌビディア(NVIDIA)の決算が発表されました。売上高は前年同期比で2倍超に増加し、利益も見通しも市場予想を上回る「満額回答」の内容となりました。来年度以降の長期見通しも高い成長(7割増など)を示し、会社側の自信がうかがえる内容です。しかし、決算発表直後の時間外取引では一時的に売られるなど、株価の反応は一見薄いものとなりました。最終的には8%程度上昇して取引を終えましたが、かつてのような大幅な急騰には至っていません。
大川氏は、この背景に「市場予想を上回る幅が、過去の四半期と比較して縮小していること」を挙げます。15四半期連続で予想を上回ってきた同社ですが、上回り幅の縮小が、一部の投資家にとって物足りなさ(サプライズ感の減退)として受け止められた可能性があります。
ただ、大川氏は今回の決算における最大の好材料として「顧客構成の分散」を強調します。これまではGoogle、Amazon、Microsoftなどの巨大IT企業(ハイパースケーラー)への販売が大部分を占めていましたが、そのシェアは低下傾向にあります。来期以降には、これら巨大IT企業のシェアが25%程度まで下がり、残り75%はその他の一般産業界の企業が占める見通しです。AI導入の裾野が一般企業へ広がっている事実は、特定の顧客の投資抑制リスクを和らげるため、長期的な需要の持続性を裏付ける動きといえます。
セールスフォースが一時23%急騰!「SaaSは死なず」ハードからソフトへの資金シフト
エヌビディアの決算と並び、今週のハイテク市場を大きく動かしたのが、顧客管理システム大手のセールスフォース(Salesforce)の決算発表です。同社の株価は決算後に一時23%急騰し、市場に衝撃を与えました。
これまで株式市場では、「生成AIの普及によって、既存のSaaS(クラウド型サービス)やソフトウェア企業は不要になるのではないか」という懸念が広がっていました。これを「SaaS is Dead(SaaSの死)」と呼び、日米のソフトウェア株は2月以降、大きく売り込まれていました。しかし、セールスフォースが安定した業績成長と、AIベンダーであるアンソロピック(Anthropic)との提携拡大を発表したことで、こうした懸念は行き過ぎであったことが証明されました。
大川氏は、「AIの導入は、既存の顧客基盤を持つソフトウェア企業にとって、製品の価値(単価)を高め、開発コストを下げるプラスの要因にしかならない」と分析します。データセンターなどの「ハードウェア(物理インフラ)」の構築が一巡すれば、次は「そのインフラを使って誰がどのように稼ぐのか」というソフトウェアやシステム構築(SIer)、ITコンサルの段階に移行します。今回の急騰は、ハードからソフトへの資金シフトが本格的に始まったサインといえ、日本市場におけるソフトウェア株の見直し買いにも繋がっています。
大川道場:高値から下落の「商船三井」は買いか?配当狙いで買ってはいけない理由
番組後半の「大川道場」コーナーでは、DJ Nobby氏から「高値をつけた後に下落している海運大手の『商船三井(9104)』を買おうか迷っている」という相談が持ち込まれました。
商船三井は直近の業績も好調で、PERは10倍程度まで買い戻されています。以前は3〜4倍で放置されていた万年割安株でしたが、水準が切り上がってきています。しかし、大川氏は「海運株は世界景気や地政学リスクに最も敏感な業績変動の大きいセクター(ディープシクリカル)であり、価格変動(ボラティリティ)が激しいため、投資判断は慎重に行うべき」と指摘します。
特に、現在約2.8%となっている配当利回りを目的に購入することに対しては慎重です。「海運株のボラティリティの高さを考えると、配当分のリターンは1日の株価下落で簡単に吹き飛ぶリスクがあります。配当目的の長期保有を考えるのであれば、価格変動が穏やかで業績が安定している他の高配当銘柄(NTTなど)を選択する方が無難です。商船三井をはじめとする海運株を取引するのであれば、短期的な値上がり益(キャピタルゲイン)を狙う取引と割り切り、価格の下落局面を冷静に待ってから現物で入るのが賢明」とジャッジしました。