はじめに

制度は、金融機関によって「別物」

もっとも、これは「制度が不要だった」という話ではありません。むしろ、選択肢を知ったうえで「うちには合わない」と判断できたこと自体に意味があったと感じています。

というのも、予約型代理人サービスは、金融機関によって中身がかなり異なります。みずほ銀行では、入出金だけでなく解約や住所変更、運用商品の売却など幅広い手続きが可能ですが、代理人との取引を開始する際には、みずほ銀行所定の診断書が必要です。一方、三井住友銀行の「代理人指名手続」は、診断書を必要書類としておらず、本人があらかじめ代理人を指名しておくことで、代理人が窓口で出金できる仕組みです。

つまり、「判断力の低下」に備える制度と、「本人が窓口に行けなくなること」に備える制度が、同じような代理人の仕組みとして用意されているということです。施設に入ったからといって、必ずしも認知症の診断がつくわけではありません。判断力が保たれたまま、身体的な理由だけで来店が難しくなるケースも多く、三井住友銀行のような仕組みはこうした場合の受け皿になり得ます。逆にみずほ銀行のような仕組みは、あらかじめ代理人を「予約」しておき、必要になった時点で発効させるものです。申し込み時点で認知機能低下の懸念がある場合は利用できないため、本人の認知機能に懸念が生じる前に検討しておくことがポイントです。

しかも、こうした仕組みは金融機関によって名称も異なります。「予約型代理人」という名称で探しても見つからないことがあるため、ウェブサイトで分からなければ取引店に問い合わせてみるのも一つです。

入居前に、確認しておきたいこと

親の施設入居が視野に入ったタイミングは、お金の動かし方を見直す一つの節目でもあります。すぐに制度を使うかどうかより、まず「取引している銀行がどんな仕組みを持っているか」「自分たちの家庭では、どこまでの備えが必要か」を確認しておくと、後々の慌てを減らしてくれるように思います。

制度は今後、対応する金融機関や内容が広がっていく可能性もあります。現在は希望する仕組みがない場合でも、金融機関の対応は変わっていくかもしれません。施設入居や親の状態が変わるタイミングで、利用できる仕組みを確認しておくのがよさそうです。大切なのは、制度を使うか使わないかではなく、選択肢を知ったうえで、自分の家族に合った形を選べる状態にしておくことだと感じています。

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