はじめに

60歳を過ぎると、定年や再雇用など「働き方」が大きく変わる方が増えてきます。同時に、80代・90代にさしかかる親の介護が現実味を帯びる一方で、自分自身の老後もすぐそこまで来ている、まさに人生の転換点です。

独身であれば、こうした変化に一人で向き合わなければならない場面も少なくありません。「収入は今後どうなるのか」「貯蓄は足りているのか」「親の介護にどこまでお金をかけるべきか」など、悩みは尽きないのではないでしょうか。

今回は、都内で暮らす60代独身男性の懐事情(年収、貯蓄額、生活費)を公表データから読み解きながら、FP視点で「お金」と「これからの暮らし」を考えるヒントをお届けします。


都内で働く60代男性の「平均年収」はいくら?

まずは気になる年収から見ていきましょう。60代は、50代までの「収入のピーク」から一転、働き方そのものが変化する年代です。

厚生労働省が公表した最新の「2024年賃金構造基本統計調査」によると、東京都で働く60代男性の平均賃金は、以下のとおりです。60~64歳の平均月収は約43万円、年間ボーナスは約114万円、年収は約625万円です。65~69歳の平均月収は約37万円、年間ボーナスは約59万円、年収は約497万円です。

東京都男性の年齢階級別賃金(万円)

厚生労働省「2024年賃金構造基本統計調査」を元に筆者作成

50代後半の900万円超と比べると、60代前半で3割ほど、65歳以降はさらに落ち込むことがわかります。これは、多くの方が定年や再雇用によって役職を離れ、雇用形態や労働時間そのものが変わることが背景にあります。

ただし、これは悲観すべきことばかりではありません。60代は「社会とのかかわり方」を自分で選び直せる年代でもあります。フルタイムで働き続ける人もいれば、週3日勤務や業務委託に切り替える人、地域活動やボランティアに軸足を移す人もいます。

収入の額だけでなく、「どのくらい社会とつながり続けたいか」という観点も含めて、自分に合った働き方を選んでいきたい時期です。

周りには聞けない「貯蓄額」のリアル:平均値と中央値

「自分の貯蓄は同世代と比べてどうなのか」は、60代になっても気軽には聞けないテーマです。

金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表している「家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯調査)2025年」によると、60代・単身世帯の金融資産保有額(貯蓄・投資等の合計)は、平均値で1364万円にのぼります。

金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯調査2025年)」を元に筆者作成

ただし、この「平均1364万円」を鵜呑みにするのは禁物です。実態に近いのは中央値で、同調査では300万円となっています。平均値と中央値の差が大きいのは、一部の資産家がリタイア後にまとまった退職金を得るなどして、平均を大きく押し上げているためです。

見過ごせないのが、金融資産を保有していない、いわゆる貯蓄ゼロの世帯が30.4%にのぼる点です。60代は、それまでの働き方や退職金の有無によって、資産状況の差が最も広がりやすい年代ともいえます。

もし貯蓄が心もとないと感じるなら、支出の見直しに加えて、退職金や年金の受け取り方(繰下げ受給の検討なども含めて)を今一度整理しておくことをおすすめします。

生活費と家賃の目安:収入減にどう対応するか

続いて生活費です。総務省の「令和6年全国家計構造調査」によると、単身男性・60代の1カ月の消費支出は平均18万718円です。50代(18万7362円)と比べても大きくは変わらず、収入が下がる一方で生活水準はすぐには落としにくい、という現実がうかがえます。

なかでも都内で暮らす場合は、住居費が大きなウエイトを占めます。公益財団法人不動産流通推進センターがまとめた「2026不動産統計表」によれば、東京の賃貸マンションの家賃相場は、ワンルームで平均8万8878円、1LDK~2DKで平均11万857円となっています。

不動産流通推進センター「2026不動産統計表」を元に筆者作成

家賃を含めた1カ月の生活費は、住まいのグレードにもよりますが24万~26万円程度が目安です。60代前半でフルタイムに近い働き方をしていれば無理のない範囲ですが、65歳以降に収入が大きく下がった場合は、これまでの生活費をそのまま維持できるとは限りません。退職や再雇用のタイミングで、一度家計全体を棚卸しし、固定費(家賃・保険料・通信費など)から見直すのがおすすめです。

60代単身男性の消費支出(1カ月・目安)

総務省「令和6年全国家計構造調査」および不動産流通推進センター「2026不動産統計表」を元に筆者作成

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