はじめに
2026年6月、日経平均株価は終値で史上初めて7万円台に到達しました。しかしその後、7月下旬には6万1,000円台まで下落し、8月中旬には再び6万9,000円台まで上昇。短期間で大きく上下する相場が続いています。
「日本株市場はどうなっているの?」と不安になる人もいれば、急騰した株を見て「あのとき買っておけば……」と後悔する人もいるでしょう。
株価が大きく動くとき、長期投資家は何を見て、どう行動すればいいのでしょうか。オルカンの生みの親である代田秀雄さんに、最近の市況について伺いました。
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三菱 UFJ アセットマネジメント前常務。シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズ代表
1985年に三菱信託銀行(現・三菱 UFJ 信託銀行)に入社。支店にて個人財務相談や法人融資などを担当した後、年金資金や投資信託の運用業務に約 30 年にわたり携わる。三菱 UFJ 投信で商品企画部長などを歴任し、2019年より三菱 UFJ 国際投信常務取締役として商品・マーケティング部門等を所管。インデックス投資を通じて、資産形成や NISA の普及に貢献した。2025年4月、三菱 UFJ アセットマネジメント常務取締役を退任し、特別業務顧問に就任するとともに、シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズを設立。中央大学法学部兼任講師(国際金融論)。人気投資信託シリーズ「eMAXIS Slim」、なかでも「オルカン」の生みの親として、メディアでたびたび取り上げられている。
値動きの激しい日経平均をどう見る?
──最近の日経平均株価は、1日に数千円も動くことがあります。長期投資家は、この激しい値動きをどう見ればいいのでしょう?
そもそも、日経平均株価(以下、日経平均)が何を示すのかご存じでしょうか。
日経平均は、東証プライム市場に上場する銘柄から選ばれた225銘柄で構成され、各銘柄の株価をもとに算出する「株価平均型」の指数です。企業規模ではなく、指数計算上の株価が高い銘柄、いわゆる値がさ株ほど指数への影響が大きくなります。足元では上位5銘柄で構成ウエートの4割近くを占めており、一部の銘柄の値動きによって日経平均が大きく動くこともあります。
だから、「日経平均は上がっているのに、自分の株はそんなに上がっていない」と感じる人がいても不思議ではありません。私自身、日経平均が大きく動いたときには、まず「一部の値がさ株の影響が大きいのではないか」と考えます。日本株市場全体の広がりを見るには、日経平均だけではなく、TOPIXもあわせて確認するとよいでしょう。
──TOPIXと日経平均はどちらも日本株を代表する指数ですよね
はい。ただし、構成銘柄や指数の算出方法、値動きの特徴などが異なります。
TOPIXは約1,600銘柄で構成され、各銘柄の「浮動株時価総額」に応じて構成ウエートが決まります。TOPIXも上位銘柄の値動きには影響を受けますが、市場で評価されている企業の規模を反映するため、より日本株市場全体の動きを捉えやすいのです。
土地でたとえると、日経平均は「坪単価」の高い土地ほど指数への影響が大きく、TOPIXは「坪単価×土地の広さ」、つまり土地全体の価格が大きいほど指数への影響が大きくなる仕組みです。日経平均は一株当たりの株価、TOPIXは会社全体の価値である時価総額を基準にしている、と考えるとわかりやすいでしょう。
「インデックスファンド=市場全体へのパッシブ投資」とは限らない?
──日経平均やTOPIXのような「指数」に連動するインデックスファンドは、すべて市場全体に追随するパッシブ投資になると思っていました
日経平均という指数への連動を目指す投資信託はインデックスファンドで、業界実務上はパッシブ運用に分類されるのが一般的です。
ただし、決められた指数に忠実に連動することと、投資理論上のパッシブ投資は、必ずしも同じではありません。後者は、市場全体を時価総額に応じた比率で保有する考え方です。
一方で日経平均は、選定された225銘柄について、一株当たりの株価を基準にウエートを付ける株価平均型の指数です。日本株市場全体を時価総額に応じた比率で保有する指数ではありません。
つまり、日経平均連動ファンドは日経平均に対して受動的に運用されるものの、日本株市場全体をそのまま保有するようなパッシブ投資とは性格が異なるのです。
私は、日経平均やダウ平均のような株価平均型の指数を「第一世代」、TOPIXやS&P500のような時価総額加重型の指数を「第二世代」と整理しています。手計算の時代に生まれた第一世代の指数は市場の代表的な動きを示す一方、値がさ株に偏りやすく、市場の広範な動きを捉えにくい限界がありました。
そこで、より広範な市場の動きを反映するものとして生まれたのが第二世代の指数です。オルカンが連動するMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスもこのタイプです。このように第一世代と第二世代では、指数を作る根本的な考え方が異なります。
「インデックスファンドだからすべて同じ」と一括りにするのではなく、その指数が何を対象とし、どのような方法で銘柄とウエートを決めているのかを見ることが大切です。