はじめに

抹茶ブームという逆風の正体

そもそも伊藤園を苦しめてきた抹茶原料の高騰は、単なる国内需給の問題ではありません。世界的な抹茶ブームを背景に、原料となるてん茶の需要が急増し、価格が跳ね上がったことが背景にあります。今現在、わたしはヨーロッパの各都市を旅していますが、たいていの都市のカフェにマッチャなんちゃらがあります。これは一時的なブームというより、定番メニューとしてカフェオレやカプチーノと同様の地位を得ている感じです。ただ、その世界的抹茶ブームによる茶葉高騰が、伊藤園の業績を圧迫していたのはとても皮肉な現象です。

なお今回の決算説明資料では、ブランド戦略の面でも動きがありました。2026年7月に「日本茶」が農林水産大臣によるナショナルGI(地理的表示)として登録されたのを受け、主力の「お〜いお茶」ブランドにGIマークを表示する取り組みを開始しています。価格改定を単なるコスト転嫁で終わらせず、日本茶としての価値そのものを引き上げる動きとセットで進めている点は、今後のブランド力を見るうえで押さえておきたい部分です。

ただし、良いことばかりではありません。会社は通期予想を据え置いており、営業利益は前期比7.8%減、経常利益は11.9%減という減益計画のままです。第1四半期だけで通期営業利益計画の51%まで進捗しているにもかかわらず、会社が計画を上方修正していない点は、今回の利益率改善を一過性とみて保守的に見ているのか、単に期初計画を変えない慣行なのか、現時点では判断がつきません。

また経常利益の伸び(13.4%増)は営業利益(22.0%増)より小幅で、為替差益の縮小や支払利息の増加が響いています。財務面でも、自己資本比率が51.4%から48.7%へ低下し、現金及び預金が116億円減少する一方、棚卸資産や短期借入金は増加しており、資金繰りの変化は注視しておきたいところです。

今回の反転が絶好の買い場かどうかは、前期の減益が一時的要因(減損・原材料急騰)によるものだったのか、構造的な収益力低下だったのかを見極める必要があります。第1四半期の結果は、値上げが定着しつつあり、自販機事業の再編効果も出始めていることを示しており、前者に近い印象です。次の焦点は、この利益率改善が第2四半期以降も続き、通期の据え置き予想を上回ってくるかどうか。そこが確認できて初めて、株価の反転が本物かどうかの答え合わせになりそうです。

投資管理もマネーフォワード MEで完結!複数の証券口座から配当・ポートフォリオを瞬時に見える化[by MoneyForward HOME]

この記事の感想を教えてください。