はじめに

NISAを始めてみたら思いのほか利益が出てしまい、うれしい反面、もしかしたらリスクを取り過ぎているのかも、と心配されている方も少なくありません。最近そういう方たちから「リスクの低い債券ファンドに乗り換えた方が良いのでしょうか?」というご質問が増えています。今回はこちらの疑問にお答えしていきます。


「債券は安全」という誤解と乗換の疑問

「債券は安全性が高いんですよね。流行のオルカンを買っていますが、リスクが気になっています」。

NISAでオルカンに投資をしたら、思いのほか利益が出て驚いているという話をよく耳にします。「投資ってやっても大丈夫なんですね」という喜びの声が増えた一方、リスクの理解が十分ではないのではと思う場面があります。

それが、「債券は安全だ」という思い込みです。また、NISAで資産形成をしている人から「最近、金利が上がってきたので、債券にも投資したほうがいいのでしょうか?」と相談を受けることもあります。

安全で金利も高ければ、あえて株式に投資をしなくても良いのではないかというお気持ちが見え隠れしています。株が上がり過ぎているという話も聞くので、心配だとおっしゃる方も多いです。

では、本当にNISAで「債券」に投資すべきなのでしょうか? 今回は、投資の枠組みとしてのiDeCoも含め、株式だけでなく債券にも投資したほうがいいのか考えていきましょう。

結論からいえば、債券を持つかどうか、また何%持つかは、NISAやiDeCoの中だけを見て決める必要はありません。大切なのは、自分が持っているお金全体を、どのような役割に分けているかです。

債券は、国や企業などがお金を借りるために発行するものです。投資家は債券を購入することで、決められた利息を受け取り、原則として満期には額面金額の返済を受けます。

一方、株式は企業の成長や利益の一部を受け取る権利を持つものです。株価は企業業績や景気、市場の期待などによって大きく変動します。

このため、一般的には株式より債券のほうが値動きは小さくなります。リスクとは「ブレ幅」ですから、値動きの幅が小さいということは、リスクが小さいと言えます。

ただし、「債券なら元本割れしない」という意味ではありません。償還まで待てば、額面金額を受け取れますが、発行元が必ず償還まで健全な財政を維持しているという保証はありません。あくまでも発行体が元気で返済が可能な場合なので、預金と同じように「安全」と考えるのは良くありません。

個別の債券には原則として満期があり、満期まで保有すれば額面金額と利息を受け取ることができます。一方、複数の債券を組み入れ、運用会社が継続的に売買・入れ替えを行いながら運用する投資信託が「債券ファンド」です。

個別の債券には原則として満期がありますが、一般的な債券ファンドには満期がなく、保有している間も組み入れている債券の価格や市場金利などの影響を受けて、基準価額が変動します。

市場金利が上昇すると、すでに発行されている債券の価格は下落する傾向があります。そのため、債券ファンドの基準価額も下落することがあります。

つまり、債券そのものと債券ファンドでは、値動きの仕組みやお金の戻り方が異なります。どちらも預金とは違うため、「債券だから安全」と考えるのは厳禁です。

GPIFをそのまま真似するのはNG? 個人の資産運用と決定的な違い

では、債券にはどのような役割があるのでしょうか。ここで参考になるのが、公的年金の積立金を運用するGPIFです。

GPIFの現在の基本ポートフォリオは、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式をそれぞれ25%としています。つまり、債券が50%、株式が50%という構成です。これは、値動きの異なる資産を組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを抑えながら、長期的に必要な収益を確保するという、分散投資の考え方に基づいています。

ただし、「GPIFが債券を50%持っているのだから、個人も債券を50%持ったほうがいい」と考えるのは適切ではありません。

GPIFが運用しているのは、長期にわたって給付に充てられる年金積立金です。一方、私たち個人のお金には、近い将来使うお金もあれば、当面使わずに貯めておくお金、そして何十年先のために増やすお金もあります。

つまり、個人の場合は、資産運用の中だけでリスクを調整する必要はないのです。NISAで何を買うか、株だけではなく債券を買うべきかで考えるのではなく、自分の資産全体を「使う・貯める・増やす」の目的に分類したうえで、何に投資をすべきかを考えるべきなのです。

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