はじめに
健康で幸せな老後を送るためには、お金が大切です。しかし、それと同じくらい大切なのが、「人とのつながり」です。孤独にならず、誰かと話したり、一緒に何かを楽しんだりする時間があることは、老後の生活の質を大きく左右します。
私は、この連載や近著『老後不安は「思い込み」が9割』でも、老後はお金だけでなく、人とのつながりや生きがいが大切だと書いてきました。先日の出版記念イベントでも、こんな質問を受けました。
「高齢になると、コミュニティや友だちをつくることが大切なのはわかります。でも、私の両親、とくに父親には、どんな方法を勧めればいいでしょうか?」
そのとき私は、「どんな小さなきっかけでもいいので、まずは人に話しかけてみること。そして、最初から一つに絞らず、いくつかのコミュニティに参加してみるのもいいでしょう」と答えました。
ただ、あとになって考えてみると、もう少し具体的に答えられたのではないかと思いました。そこで今回は、私自身の反省も込めて、「コミュニティへの一歩をどう踏み出すか」について考えてみたいと思います。
定年すると、男性のコミュニティは一気に減る
とくに男性は定年すると、それまでの人間関係が一気に変わることがあります。その最大の理由は、現役時代の人間関係の多くが「仕事を通じたつながり」だからです。定年後も再雇用や嘱託社員として働く人は多いですが、正社員だった頃とは立場も仕事の内容も変わります。
時間の使い方も変わってきます。現役時代には毎日のように顔を合わせていた同僚とも、定年を境に会う機会が少なくなるでしょう。こちらが時間を持て余していても、相手には仕事があると、以前のように気軽に誘うことが難しくなることもあります。
こうして、仕事を中心にできていたコミュニティは、仕事を離れると徐々に薄れていきます。だからこそ、定年後には「仕事とは別のコミュニティ」を持っておくことが大切なのです。
「孤独」は老後の大きなリスク
もちろん、「人付き合いは面倒だ」「一人でいるほうが気楽」という人もいるでしょう。
無理に人と付き合う必要はありません。ただし、「孤独」と「一人の時間」は少し違います。一人で過ごすことを自分で選び、楽しんでいるのであれば問題ありません。しかし、人と話したい、誰かとつながりたいと思っているのに、つながる相手がいない状態は、大きな問題になります。孤独は、健康や認知機能、幸福度などにも影響するといわれています。
子どもの立場からすると、現役時代には毎日のように会社へ出かけ、休日にはゴルフなどに出かけていた父親が、定年後は一日中家にいる姿を見ると、少し心配になることもあります。
「せっかく時間があるのだから、外に出て誰かと話したり、何かを楽しんだりすればいいのに」そう思うのも、親に元気で楽しく過ごしてほしいという子どもの願いでしょう。
入りやすいコミュニティは3種類
では、高齢者が参加しやすいコミュニティには、どんなものがあるのでしょうか。大きく分けると、「地域」「趣味」「施設」の3つから探してみると見つけやすいと思います。
まず「地域コミュニティ」です。町内会や老人クラブ、地域のボランティア活動など、その地域に住んでいる人を中心にした活動です。自治体の広報誌や地域の掲示板、回覧板などに案内が掲載されていることがあります。
私が住んでいる世田谷区でも、広報誌やネットから、スポーツ教室や文化講座、ワークショップなどの情報を得ることができます。
次に「趣味のコミュニティ」です。これは、比較的入りやすいコミュニティだと思います。釣り、ウォーキング、写真、俳句、将棋、囲碁、料理、音楽など、趣味をきっかけに人とつながります。
趣味は一人でも楽しめますが、仲間ができると楽しみ方が広がります。「同じ趣味」という共通点が最初からあるので、初対面でも話すきっかけをつくりやすいのもメリットです。
そして「施設のコミュニティ」です。スポーツクラブ、カルチャーセンター、デイサービス、老人ホームなど、施設を通じて人とつながる方法です。セミナーや勉強会などに参加して知り合いができるケースもあります。
自分から話しかけるのが苦手でも、同じ場所に何度か通っていると、向こうから話しかけてもらえることがあります。