はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
母は、74歳で一人暮らしです。購入した国債600万円が満期となり、その後の運用をどうしようか相談されています。証券会社からは外貨建ての投資信託を勧められているようですが、年齢から為替リスクのある商品を選択すべきではないと考えています。安全性と換金性を優先した、なるべく有利な商品を検討したいと思うのですが、お勧めの方法はないでしょうか。
(40代後半 既婚・子供3人以上 男性)
内藤: ご質問ありがとうございます。資産運用を考える場合、まず運用の目的を明確にする必要があります。
今回の場合は、安全性と換金性を重視したいということですから、その点から商品を慎重に選択する必要があります。
資産運用のリスク
まず、安全性ですが、資産運用のリスクとしては金利リスク、為替リスク、株価リスク、信用リスクなどがあります。
株式を組み入れた投資信託や株式のETFは株価の変動によって元本が大きく目減りする可能性もありますので、リスクが高い商品ということができます。
また、外貨を組み入れた商品は為替の変動によって円ベースの資産が目減りする可能性がありますから、こちらもリスクが高いといえます。
金利リスクとは金利が上昇し、債券などの価格が下落することです。期間の長い債券は金利上昇による下落幅が大きくなりますから、長期の固定金利の債券は金利リスクが高くなります。
一方、株式の個別銘柄に投資をすれば、その投資先企業の信用リスクを取ることになります。これも高いリスクといえます。
換金性を重視ということであれば、なるべき流動性リスクがない、いつでも換金できる商品を選択すべきということになります。
「リスクを取らないリスクも」
このように、さまざまな条件を考えていくと、お母様が投資すべき商品としては個人向け国債の10年満期変動金利型がベストだと思います。
この商品であれば、銀行の定期預金よりも高い利回りが期待できます。安全性については元本を国が保証しており、金利は半年ごとに見直されますから、金利が上昇しても元本が下落することはありません。1年経てばいつでも換金できる流動性もあります。
ただ、このように元本の安全性に優れた商品ではありますが、インフレと円安には対応できないことには注意が必要です。
例えば、インフレになれば、名目では元本は減りませんが、実質的に資産価値が下落することになります。インフレ率以上のリターンを得られなければ、実質的には元本が毀損していくことになります。
また、為替変動による直接的な影響がない商品ですので、円安によって輸入インフレが発生するような事態にも対応できません。
安全性が高い商品で資産運用をすると安心感があるかもしれませんが、一方で上記のような「リスクを取らないリスク」があることを知っておきましょう。