はじめに

米国で7~9月期決算の発表が本格化し、日本でも主要企業の決算シーズンを迎えています。好業績を発表したのに株価が下落する一方、減益でも株価が上昇するのはなぜでしょうか。米国企業の決算事例をもとに、市場予想と実績の差や業績見通しが株価に与える影響を解説。日本企業の上期決算で注目したい進捗率や利益の質、決算後の投資判断に役立つポイントを紹介します。


好決算でも株価が下がる理由と市場予想の関係

米国では2026年7~9月期の決算発表が本格化しており、日本でも主要企業の決算が相次いで公表される時期を迎えています。決算シーズンは、企業の成長力や収益性を確認できる重要な機会であると同時に、株価が大きく動きやすい時期でもあります。

売上高も利益も前年を上回り、過去最高益を更新したにもかかわらず、翌日の株価が大きく下落するケースがある一方で、前年同期比で減益となった企業の株価が急上昇することもあります。「好決算だったのに、なぜ株価が下がるのか」と感じたことがある方も多いのではないでしょうか。

こうした値動きを理解するうえで重要なのは、株式市場が評価しているのが、発表された業績そのものの良し悪しだけではなく、事前の市場予想と実際の結果との差であるという点です。企業の業績が好調であることと、その企業の株価が上昇することは、必ずしも同じではありません。

たとえば、ある企業の純利益が前年同期比で20%増加したとします。数字だけを見れば十分に好調な決算ですが、市場が30%の増益を予想していたのであれば、実際の利益は期待を下回ったことになります。反対に、純利益が前年同期比で10%減少した企業でも、市場が20%の減益を予想していたのであれば、想定よりも悪化しなかったと評価され、株価が上昇する可能性があります。つまり、決算を読む際には、前年同期との比較に加えて、市場予想との比較が欠かせません。

市場予想を上回る企業が増える米国決算

実際のデータを確認してみましょう。米調査会社ファクトセットによると、過去10年間でS&P500構成企業のうち、四半期の1株当たり利益(EPS)がアナリスト予想を上回った企業の割合は平均で77%でした。また、実際に発表されたEPSは、市場予想を平均で8.0%上回っています。特に直近4四半期では、82%の企業がEPS予想を上回り、その超過率は平均13.8%に達しています。企業の利益が事前予想を上回る傾向が、近年はさらに強まっていると考えられます。

決算発表を通じてS&P500全体の利益成長率がどの程度上方修正されたかを見ても、同様の傾向が確認できます。過去10年間の平均は6.9ポイント、過去5年間の平均は6.4ポイントでした。これに対して直近4四半期の平均は14.1ポイントとなっており、企業業績が事前予想を大きく上回る状況が続いています。

2026年10月23日に公表されたデータによると、S&P500構成企業のうち、7~9月期決算を発表した企業は全体の24%で、その83%が市場予想を上回る1株当たり利益(EPS)を計上しました。

この割合は過去5年間の平均78%を上回っており、多くの企業が市場の利益予想を超える決算を発表していることがわかります。

ただし、注目したいのは、利益が市場予想をどの程度上回ったかという点です。発表済み企業の利益を合計すると、市場予想を上回った幅は2.1%にとどまっています。過去5年間の平均7.5%と比較しても、今回の上振れ幅は小さくなっています。

このように、市場予想を上回る企業の割合が高くても、利益の上振れ幅が大きいとは限りません。また、投資家も「予想を上回る決算が出やすい」ということをある程度織り込んでいると考えられます。そのため、EPSが市場予想をわずかに上回っただけでは、株価が大きく上昇しないこともあります。決算が良かったかどうかだけでなく、どの程度予想を上回ったのか、その内容が今後の利益成長につながるのか、そして決算発表前に株価がどれほど上昇していたのかまでを考える必要があります。

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