はじめに

後期高齢者医療制度に、株式や投資信託の売却益、配当などの金融所得を反映させる仕組みが導入されます。2029年8月からの反映を目指すスケジュール案が示され、SNSでは「国は資産形成を勧めておきながら、その所得を社会保険料に反映させるのか」といった不満や不安の声も見られます。今回は、この改正を「私たちの問題」として考えていきます。


75歳以上の保険料に金融所得を反映! 2029年8月スタートの制度変更

「国はNISAを使った資産形成を勧めておきながら、今度は金融所得を社会保険料に反映するという。結局、金融資産を持っている人が狙われるのではないか」

今回の金融所得に関する制度改正について、SNSなどではこうした不満や不安の声があがっています。さらに「今回は75歳以上が対象でも、いずれ年齢が引き下げられるのでは?」といった疑問も広がっています。

確かに、長年コツコツと資産形成をしてきた人にとっては、気になる話でしょう。ただ、今回の改正は、金融資産を持っているだけで社会保険料が増えるという話ではありません。ポイントは、金融資産そのものではなく、そこから得られる「金融所得」の取り扱いが変わることです。

そもそも、私たちの収入には、社会保険料の計算に反映されるものと、そうでないものがあります。

会社員として働いていると、毎月の給与明細から健康保険料や厚生年金保険料が差し引かれています。これらの社会保険料は、給与や賞与をもとに計算されます。実際には、給与を一定の区分に当てはめた「標準報酬月額」や「標準賞与額」を使って計算しますが、基本的には給与や賞与が多い人ほど社会保険料の負担も大きくなる仕組みです。

では、株式投資で利益が出た場合はどうでしょうか。例えば、会社員が給与とは別に、株式の配当金を受け取ったり、保有していた株式を売却して利益を得たりしても、会社員が加入する健康保険や厚生年金の保険料には原則として反映されません。会社員の社会保険料は、給与や賞与を基準に計算されるためです。

一方、自営業者などが加入する国民健康保険や、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度では、所得に応じて保険料が決まります。こちらは、株式の配当金や売却益も、確定申告をすれば保険料などの算定に反映される場合があります。

ところが、証券会社で「源泉徴収あり」の特定口座を利用し、確定申告をしなければ、原則としてこうした金融所得は自治体に把握されず、保険料などに反映されませんでした。つまり、同じ金融所得を得ていても、確定申告をするかどうかによって、社会保険料などの負担に違いが生じていたのです。

今回の改正では、こうした違いをなくすため、確定申告をしたかどうかにかかわらず、金融所得を保険料などの算定に反映させる仕組みへと変わろうとしています。

2026年5月、医療保険制度改正法が成立し、後期高齢者医療制度における金融所得の取り扱いが見直されることになりました。2029年8月から、株式の配当金や売却益などの金融所得を、確定申告の有無にかかわらず、医療保険料や医療機関の窓口負担割合の判定に反映する仕組みが始まります。

具体的には、金融機関が保有する金融所得の情報を、オンラインで後期高齢者医療広域連合に提供する仕組みを整えます。2029年1月から金融機関による情報提供が義務化され、まずは2028年分の金融所得が2029年8月から反映される予定です。その後、月単位の情報も含めた全面的な反映は2030年8月からとなります。

対象となるのは、原則75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度です。これまで確定申告をしなければ把握されなかった金融所得も、今後は保険料や窓口負担割合の判定に反映されることになります。

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