読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

昨年、アメリカから帰国しましたが、バンガードの口座を非居住に切替えて残しています。日本でバンガードの投資信託を間接的に購入したり、ETFをアメリカ株式取引で購入したりするよりも手数料が安く有効だと思っているのですがいかがでしょうか? 税務申告周りが煩雑になるかと思いますが、来年以降はアメリカでの確定申告は不要で5%が源泉徴収されるのみと理解しています。


その上で日本での確定申告はどのようになりますか? 日本の税率との差額15%分を申告納税すればよいのでしょうか? また日本の特定証券口座と損益通算は可能ですか? アメリカの証券口座の効果的な活用法をお教えいただけると幸いです。
(40代前半 既婚・子供1人 男性)


野瀬: ご質問ありがとうございます。

税金の“二重取り”に注意

海外に資産を残している場合は、「税金を二重で取られる」ことがないように配慮してください。

現地で投資を行った場合、源泉徴収されることが多いですから、その源泉徴収分をしっかり日本の確定申告時に申告し、税の二重取りをされないようにします。これを「外国税額控除」と言います。

投資商品にもよりますが、考え方は質問者の方の理解で概ね合っています。各々の国で徴収された税金を日本の確定申告では差し引いて申告するというかたちになります。

ただし注意したい点が2つあります。

総合課税と分離課税

ひとつは税務署によって「総合課税」で申告すべきか、「分離課税」で申告すべきかが異なる点です。

この点は、事前に税務署に問い合わせ確認してみるとよいでしょう。税務署は匿名の問い合わせでも対応してくれるのでご安心ください。

分離課税と言われた場合は、質問者の考え方で正解です。

日本での所得税15%(20%ではありません。20%のうち5%は住民税です)から、外国で引かれた税金分を差し引いて最終的な税負担を考えます。

しかし、総合課税になった場合、日本は所得の高い人ほど税率が高い累進課税という制度になっていますので、高所得者にとっては非常に重い税金になる可能性が高いです。

そして私の感覚では税務署から「総合課税です」と言われた人の比率のほうが高いです。

これだけインパクトのある話が税務署によって違う対応というのも不思議な話ですが、実務上はそのようになっています。

おそらく為替の影響もあるからだとは思うのですが、投資家として少し納得がいかないところです。

もう1点注意したいのが、「海外でとられた税金のすべてが、日本の確定申告で『外国税額控除』として認められるわけではない」という点です。

私が1年の3分の2程度を過ごしているインドでは、租税条約で定められている比率以上の源泉徴収が差し引かれることがあります。

このような場合、日本の税務当局は当然、租税条約で定められた税率分しか外国税額控除を認めてくれませんので注意が必要です。

申告が必要なのはどんなとき?

利益が生まれた場合は、税務署に確定申告する必要があります。

そして前述の外国税額控除を受ける場合は、所定の「外国税額控除に関する明細書」を添付する必要がありますので忘れないようにしてください。

そしてもう1点、海外に5,000万以上の資産を持っている場合は税務署に海外財産の内容を申告する「義務」が生じます。

これは利益が出た出ないにかかわらず義務です。ペナルティもありますので注意が必要です。

ここ数年、税負担が重くなる日本から海外に財産を移そうという動きが活発になっていますので、税務署も海外資産に目を光らせているようです。

100万円以上の海外への送金、海外からの送金はすべて税務署に報告されていますので「海外の資産なんて申告しなくてもバレないでしょ」という考えでは危険です。

海外に資産を持つということ

そうは言うものの「海外に資産を持つ」考え方に私は賛成です。為替面でのリスクヘッジになるからです。

また質問者の方も述べているように、日本の証券会社を通して海外の投資商品を買うよりも海外の口座から直接購入したほうが手数料の面でもかなりお得であることは間違いありません。

投資初心者にはおすすめしませんが、投資中級者以上であればどんどん口座を開いて投資の幅を広げるとよいでしょう。そしてルールを守りながら地道に投資してください。

海外に口座を作るのには、そもそも手間暇がかかりますし、今すぐ「投資したい!」と思って今日できるものでもありません。また、制度が変わり、ある日突然作ることが難しくなる場合もあります。

今お持ちの口座をしっかり管理してください。

地味ですが個人的におすすめなのは、「為替の大きな変動に合わせて、日本と海外の口座を出し入れし、海外では株ではなく投資信託などの商品を数年単位で保有する」という投資手法です。

リーマンショックや震災、アベノミクスなどのタイミングに大きく運用通貨を切り替えて、あとは株より比較的安全な投資信託を買って数年寝かすイメージです。大きく儲かることはありませんが、「負ける可能性が低い」という点でおすすめします。

悪徳コンサルにご注意

海外投資というと、「1年で倍に!」などと考える方が多いのですが、特にアメリカのような投資先だと基本思想は日本と同じです。数年で30%から50%の利回りを狙うぐらいが勝率が高いと思います。

最後に海外に住んでいる視点から注意してほしいのが「悪徳コンサル」の存在です。

「海外に資産を移したい」「海外に口座を持ち投資したい」という要望が増えるとともに増加したのが、そういった資産家を狙った詐欺に近い自称投資コンサルです。

口座を作ること自体に莫大な報酬を要求したり、現地事情を知らないのをよいことに二束三文の土地を高額で購入させたりする事案も聞きますので、投資をする際にはご注意を。

バンガードのようなよく知られた投資先であれば問題はありませんが、聞いたこともないような私募債などを勧めてくる業者には注意してください。