はじめに
コウモリ企業と日出(ひいず)る企業(SUNRISE/BAT)
独自路線の命名は「日本と中国」の注目銘柄にも存在します。
例えば、FANGやMANTのような知名度こそありませんが、「SUNRISE」(サンライズ)という表現があります。日の出(sunrise)とかけた表現になっているところがポイント。これは日出ずる国、日本の注目銘柄を表す略語です。
ただしSUNRISE(7文字である点に注意)に含まれる企業は、7企業ではなく4企業です。具体的には、ソフトバンク(Softbank)、任天堂(Nintendo)、リクルートホールディングス(Recruit Holdings)、ソニー(SONY)を表しています。この4社の頭文字を組み合わせると「SNRS」。これを強引にSUNRISEと読み替えていることになります。
筆者がSUNRISEという表現を発見したのは、ブルームバーグでのことでした(参考:2017年6月12日「Forget the FANGs: The ‘Sunrise’ Stocks Are Doing Better in Japan」)。このSUNRISEはFANGほどの注目度はないものの、一部メディアがブルームバーグの後追いで話題を紹介する程度には注目されているようです。
一方、中国の株式市場における注目銘柄は「BAT」(batはコウモリの意)とされます。検索エンジンのバイドゥ(Baidu/百度)、電子商取引のアリババ(Alibaba/阿里巴巴)、SNSのテンセント(Tencent/騰訊)の総称です。SUNRISEとは異なり、BATの方は「FANGとの比較記事」がよく登場するほど国際的にメジャーな表現となりました(参考:ウォール・ストリート・ジャーナル2017年10月16日「BAT対FANG、中国ハイテク勢が危険な理由」など)。
このように株式市場の世界では、FANGからBATに至るまで、注目銘柄を示す略語が次々と登場し続けています。
実は日本と深い関係も
最後に、ここまでの略語で登場した「目新しい企業名」について簡単に紹介して終わりとしましょう。ここで登場する新興企業は、いずれ日本でも有名な存在になるかも知れません。実際、経済メディアでは略語で登場する企業と日本との「意外な関係」もよくニュースになるのです。
例えばCAAFANNGで登場したコムキャストは、もともとケーブルテレビやネット接続などのサービスを行う企業ですが、近年ではテレビネットワークのNBCなどのメディア企業も傘下に収めたことでも知られます。2015年には大阪のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の経営会社を買収して話題になりました。
FANNGやMANTで登場した半導体メーカーのエヌビディアは、もともと画像処理関連のチップで有名な会社ですが、最近ではAI(人工知能)への積極的な投資でも知られます。家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」を任天堂と共同開発したことでも有名です。
またSLAWで登場した配車サービスのリフトは、ウーバー(Uber)の競合としても知られる存在で、日本の楽天が出資したことでも話題になりました。同じくSLAWの一角である共同オフィスのウィーワークは、ソフトバンクの出資でも話題になっているほか、近く日本でのサービスも開始予定です。
さらにBATで登場した中国系企業と日本との関わりも深まっています。バイドゥはかつて日本向けに検索エンジンも提供していたほか、日本語入力ソフトウエアの提供でも知られます。またよく知られる話ですが、アリババの筆頭株主は日本のソフトバンクです。そしてテンセントは近年、子会社を通じて日本アニメへの積極投資を行っていることでも知られています。
このようにFANG系の略語の中身を追いかけていると、株式市場における注目銘柄(さらには未上場の注目銘柄)が分かるだけでなく、それら企業と日本との意外な関係にも気づくことになります。FANG系略語に含まれる企業は、投資家にとってだけでなはく、実は多くの日本人にとっても身近になりうる銘柄だと言えそうです。