はじめに

先週、コンビニ、スーパー、百貨店の各業界の2017年の年間統計が相次いで発表されました。コンビニは13年連続の増収で、過去最高の売上高を更新。一方、百貨店とスーパーマーケットは前年比で減収となりました。

最近の生活を振り返ってみて、百貨店やスーパーで買い物をする機会がめっきり減って、買い物といえばもっぱらコンビニかネット通販になっている、という方も多いと思います。いわば、生活者の実感値に近い結果が出た形です。

しかし、それぞれの統計をつぶさに見ていくと、表面的な数字ではわからない、小売業界の実情が浮かび上がりました。消費の最前線で何が起きているのでしょうか。


コンビニの増収は店舗増が主因

日本フランチャイズチェーン協会の調べによると、コンビニ業界の年間売上高は全店ベースで前年比1.8%増の10兆6,975億円。ただし、既存店ベースでは9兆4,738億円で前年比0.3%の減少。全店ベースの1.8%増は、店舗数が3.2%も増えた結果です。

飽和状態になったと言われて久しいコンビニ業界ですが、店舗展開は基本的にフランチャイズですから、経営上のリスクは加盟店側が負っています。売上高が各加盟店の利益に結びついているかどうかまでは、この統計は表していません。

リスクの担い手が新たに登場し続ける限り、この統計上の「売上高」は伸び続けるのでしょう。

百貨店は既存店に底打ちの兆し

一方、日本百貨店協会のまとめによると、百貨店は全店ベースでは前年比0.4%減の5兆9,532億円でしたが、既存店は0.1%増となりました。既存店がプラスになるのは3年ぶりです。

地方を中心に不採算店の閉鎖で店舗数が減り、全体の売上高は減りました。が、既存店は東京、大阪など10大都市が1.4%伸び、それ以外の地区のマイナスをカバーしたようです。

10大都市の店舗の好調を支えたのは、インバウンドと高額品です。免税売上高は2,704億円で、金額そのものは全体の4.5%でしかありませんが、前年比では1.4倍という驚異的な伸び率となりました。この金額は、「爆買い」という言葉が生まれた2015年の1,943億円をも大きく上回ります。

外国人と富裕層が需要を下支え

品目別では、衣料品、家具・家電、食料品が軒並み前年比でマイナスになる中、化粧品が17.1%増の5,122億円、美術・宝飾・貴金属が3.6%増の3,474億円となりました。

このうちどのくらいが免税分なのかまでは、この統計には出ていません。ですが、中国ではメイド・イン・ジャパンの化粧品は人気が高いので、化粧品の伸びがインバウンドによるものであることはほぼ間違いないでしょう。

百貨店の売上高は2008年には7兆3,813億円ありましたが、この年の化粧品の売上高は3,594億円でした。リーマンショック以降は3年連続でマイナスとなった後、2012年にプラスに転じてから6年間で1.5倍に増えた計算になります。

また、「株価が上がると高額品が売れる」という鉄則は今も健在なようで、高額品の主な購買層は富裕層です。株価が上がると、実際に株式を売却して現金にするわけではないのでしょうけれど、計算上の資産価値が増えたため、気持ちに余裕が出るということなのでしょう。

衣料品の減少が目立つスーパー

最後にスーパーです。年間の売上高は12兆9,175億円と、全店ベースで1.0%減、既存店ベースでも0.9%減でした。

スーパーの統計を発表している日本チェーンストア協会は、1992年からの売上高の長期統計を公表しています。これによると、過去26年間で最高だったのは1996年の16兆9,786億円です。

2017年に比べて4兆円も多かったことになります。減少が目立つのは、衣料品(2.5兆円減)と住関連(1.1兆円減)です。

一方、食料品は増えています。1996年の食料品の売上高は7兆9,331億円だったものが2017年には8兆4,599億円と、5,268億円増加しています。

惣菜が小売業界の救世主に

その食料品も、ずっと伸び続けていたわけではありません。リーマンショックで落ち込み、その後も増えたり減ったりを繰り返しています。直近では2年連続で減収です。

ここ3~4年、確実に成長を続けているのは惣菜。2012年は8,334億円でしたが、2017年は1兆0,126億円でした。コンビニも惣菜を扱うようになり、競合は激しいはずですが、それ以上に需要が増えて、市場が拡大しているということでしょう。

少子高齢化はますます進みます。若い世代も含め、日本人の「個食化」はこれからも拡大することはあっても縮小することはなさそうです。惣菜は小売業界にとって重要な成長アイテムであることは間違いないでしょう。

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